こんばんは、おのんです。スヤです。
さて、まだまだmi-casa FESTA続いております!!たくさんの反響をいただき有難い限りです。趣向を凝らしたエントリーがこれからも続きますので、よかったら楽しんでいただけますと嬉しく思います・・・!
さて、今回は2月頭から永遠に下書きに眠っていた、BTSの「Black Swan」ダンス解説記事をお送りします。主にスヤが放置しすぎたせい ごめんなさい
ブラックスワン、踊る(踊っていた)オタクたちにはあまりに刺激が強すぎた。何がすごかったのか解析して語りまくりたいと思います。
要素がかなり多いので、読みごたえ満載となっており…。休憩をはさみつつ、ご覧ください。
- Black Swan(BTS Performance ver.)の衝撃
- Black Swan(BTS Performance ver.)ダンス解説①:曲調とダンス
- Black Swan(BTS Performance ver.)ダンス解説②:裸足で踊るということ
- Black Swan(BTS Performance ver.)ダンス解説③:振付・構成 ver.のん
- Black Swan(BTS Performance ver.)ダンス解説④:振付・構成 ver.スヤ
- Black Swan(BTS Performance ver.)ダンス解説⑤:ジミンがすごかった+メンバーのダンス感想
- Black Swan(BTS Performance ver.)ダンス解説⑥:「Black Swan」というコンセプト
- あとがき:喝采に代えて
Black Swan(BTS Performance ver.)の衝撃
おのん初見の感想はこちら↓
黒鳥 みた しんどい しんどい
— おのん⁷ (@n_______n17) 2020年1月29日
もうなにもできないしなにもしたくない
— おのん⁷ (@n_______n17) 2020年1月29日
...いや、おのんどうした?(どうした?)
まあしんどい理由はいろいろあるんですが、こういうしんどい曲で踊るダンスってこう、心の根底にある色んな黒い感情をえぐってくるというか...ね...(シランガナ)
個人的理由はともかく、Black Swanのパフォーマンスそのものは素晴らしかったですし、鳥肌ものでした。
素晴らし過ぎて整理しきれないっていうのもしんどい理由の中にあるので、その感情を紐解くためにも解析してみたいと思います。
なお、基本当ブログではおのんがダンス記事を担当させていただいていますが今回は色んな意味で荷が重すぎるためスヤさんと一緒にお送りします!
こちらを見ながらぜひお読みください。
▽2人の簡単なダンス遍歴はこちら
【のん】
高校入学と同時にダンス部に入部。ダンス部といってもストリートダンスではなく、テーマを決めて音源、振付を全て自分たちで作り踊る「創作ダンス」をメインに踊っていました。引退後1年半を空け大学ではストリートダンスサークルに入りhouseを主ジャンに踊る。(期間限定でlock、waackもかじった)留学のため中断、一時復帰後代の引退とともに辞める。が、社会人になりうっかりKPOP沼に足を突っ込み、うっかりダンスを再開。現在は週に1〜2回KPOPのカバーダンスと基礎練のレッスンに通っています。
【すや】
幼少期10年間クラシックバレエを習い、キャラクターダンスなどもなんとなくワークショップを受ける。一番真剣に取り組んでいた時期にやむなく辞めることになり、それ以来踊ること自体が一種のトラウマになった(※そのためBlack Swanで引用されたマーサグラハムの言葉が死ぬほど刺さって激病みする)。大学1~2年時にやっぱり踊りたい…!と思い立ち、ジャズダンス・コンテの教室に通った。セクハラ諸事情で辞め、以後復帰できず今に至る。舞台鑑賞は地味に続けています。
Black Swan(BTS Performance ver.)ダンス解説①:曲調とダンス
ヒップホップ × コンテ、ラップ × コンテ by おのん
あまりに新鮮でびっくりしたのがまずこれです。
これまでになかった曲調と踊りの出会い。あの曲で、コンテの振りも踊っちゃう????と。
コンテンポラリーダンスって、あんまりビートの強い曲で踊らないイメージがあったといいますか...
ビートに合わせたカウントを意識して踊る、というよりは曲の流れとか、強弱であったりとかを意識して踊るイメージがあったので、まずそこに驚きました。
まあjazz-hiphopというジャンルもあるくらいなので、前者はまだしも後者ですよね。ラップとコンテ。これやろうと思った人、今までいたんだろうか...。
最初何に自分でも衝撃を受けてたんだろう、と思っていたのですが、映像見返してわかりましたこれでした。
シュガさんのラップ、少し歌っぽいラップだとはいえあの節回しにあのグクの振付、どこから考え付くんだろう...今見返しても、振付師さんにもそれを踊りこなすメンバーたちにも鳥肌です。
Emo Hiphopというジャンルで踊る by すや
BlackSwanは「Emo Hiphop(Emo Rap)」と呼ばれるジャンルの楽曲です。
昨年急逝したJuice WRLD(BTS WorldのOSTでナムジュン・シュガとフィーチャリングしたラッパー)やXXXTentacion、Lil Peepなどが有名どころ。
※Juice WRLDとのコラボ曲
EMO(エモ・ジャンル)とHIPHOPを掛け合わせた音楽で、メロディラインが美しく、「歌うラップ」とも言われます。
Emo Hiphopは感傷的で内省的・抒情的な歌詞が特徴のジャンルです。従来のヒップホップの文脈とは真逆ともいえる「弱さを見せる」ラップであり、ちょっと特殊なサブジャンルだと思います。
サウンドは、トラップビートをベースにオルタナティブロック、グランジなどに影響された作り。
Black Swanが公開されて、ショックを経て冷静に曲を聴いたとき、こ、このジャンルで踊るんだ!?という衝撃を受けました・・・。なぜこの曲調で歌いラップしながら踊れるんだろう怖いよ…
Black Swanは、ジミンの動きを見る限り&コンテのテイストを取り入れている以上、必ずしもビートに合わせてカウントを取っているわけではないと思います。
拍を取らないダンスと拍そのもののラップ、それが共存していて、ボーカルのメロディラインもいつもより拍感があるのに不思議な感じがしました。
上記でのんちゃんも言ってますが、これやろうと思いついたビッヒ、やっぱり先駆者でありたいんでしょうか。
実はBlack Swanって、楽曲的にはそこまで真新しいサウンドではありません。
たしかにKPOPの文脈で言うと近年のグループはあんまりやってない感じのサウンドに隙間のある音楽でしたが。
「Black Swan(黒鳥)」というコンセプト自体も、「七つの大罪」や「ギリシア神話」と同じく古典的なテーマ。
それでもBlack Swanが割と大きな衝撃をもって登場できたのは、「Emo Hiphop × コンテンポラリー風味のダンス」の組み合わせの異質感ではないかと…わたしは思います…。※私見です
TMI:振付師情報
ちなみにBlack Swanの振付師はSergio Reis(セルジオ・レイス)さんという方らしい。
ブラジル人でオランダのダンスカンパニーの振付師の方。ほぼ無名の新人らしく、ビッヒのこういう掘り当てる力って本当にすごい。さすがメガベンチャー(大語弊)
Instagram:https://www.instagram.com/sergiovsreis/
Black Swan(BTS Performance ver.)ダンス解説②:裸足で踊るということ
正確に申し上げますと、"Black Swan"の振り付けはバレエではないです。
コンテ、と言いきることもできません。でもHiphopでもありません。
二つをベースに、色んな種類のダンスを組み合わせているダンスだと思います。違っていたらごめんなさいですが...
ということで、バレエではありませんが、「黒鳥」というテーマと概念は紛れもなくバレエ作品「白鳥の湖」から来ており切っても切り離せない関係なので、ここではあえて触れながら書いていきたいと思います。
プロのダンサーではない一般人による大騒ぎブログですので、どうかお手柔らかに...
裸足 byおのん
いきなりコアだな。すみません...
遡ること1週間前、インスタに載っていた練習風景を見てまずおのん・スヤが発狂したポイント。
「「パク・ジミン裸足ーーーーーーーーー(号泣)」」
何故こんなに大騒ぎしていたかというと、ズバリ、コンテでは普通靴を履かないからです。
そして、ジミンの専門は現代舞踊つまりコンテンポラリーダンス。(厳密には違うけれどジャンルで分けるとしたらほぼ同じなのでここでは一緒にさせてください)
他のメンバーは靴を履いていたのにジミンだけは履いていなかった。
つまり、練習段階でジミンさんの本気が、ヒリヒリと感じられたわけです。
もうこれだけで胸がいっぱい。えぐい。(限界ジミンペンたちの人格こんにちは)
おのんはBlack Swanリアルタイムは仕事をしていたため、映像は見られなかったのですが、サムネだけは見られまして、その時の様子(?)がこちら
全員裸足なの確認した 死
— おのん⁷ (@n_______n17) 2020年1月29日
いや結局エグられとるやないか。
とまぁこんな感じで、ジミンのソロパフォーマンスならともかく。
というかこれまでのソロパフォーマンス(LieとSerendipity)でも靴を脱がなかったのに、まさかの7人全員のパフォーマンスで裸足で踊る日がくるとは思わなかったのでびっくりしたわけです。本気度よ。
あと全員裸足だったから普段見られない足の形まで見られたので感動しました。全員見事な綺麗なフレックス(足首を90°に曲げること)だったな...
裸足で踊ることの意味 byスヤ
では、「なぜコンテでは靴を履かないのか?」「なぜ裸足が重要なの?」、という点をダンス史と絡めて説明してみたいと思います。
少しだけ難しい話になりますが、どうぞお付き合いください。
コンテ・モダンダンスへのリスペクト
BlackSwanでは、モダンダンスの振付師、マーサ・グラハムの言葉をMVの冒頭に引用していますよね。
「A dancer dies twice — once when they stop dancing, and this first death is the more painful.」
和訳:ダンサーは二度死ぬ。 最初の死は踊りをやめる時だ。 そしてこの死は何にも代えがたい苦痛である。
このマーサ・グラハムという人は、アメリカの舞踏家で、モダンダンスというジャンルを確立した開拓者の一人です。
冒頭に引用してあるこの言葉や、振付の傾向から、BlackSwanにはコンテンポラリーダンスおよびモダンダンスへのリスペクトが含まれているとも考えられます。
裸足で踊るモダンダンス
上記でわたしたち2人がしきりに言っている「コンテ」とは、コンテンポラリーダンスのこと。コンテンポラリーダンスは、表現やテクニックに形式を持たない自由な身体表現の手法で踊られるダンスです。
この「コンテ」の源流は、マーサ・グラハムが開拓した「モダンダンス」にあります。
モダンダンスは、イサドラ・ダンカンという舞踏家が、それまで主流だったバレエシューズを脱ぎ捨て、裸足で踊り新しく創り上げたダンス。
イサドラは身体表現そのものを改革し、「裸足のイサドラ」のあだ名で呼ばれました。
それまで舞踏界の主流だった「バレエ」は、バレエシューズやトゥシューズを履き、幻想的な世界観を表現することに重きを置いていました。
バレエは、妖精や精霊、白鳥など、異界・人外の存在に憧憬を抱き創り上げられた幻想芸術であったと言えます。
つまり、靴(トゥシューズなど)を履いて踊るのは、そういった人間ではないものへの「変身」の要素があったということです。
一方で、モダンダンスは裸足で踊り、地を這うような斬新な振付で当時の人々を衝撃の渦に突き落としました。
大地に生きる人間の苦悩・生き様を映し出し、「リアル」としてのダンスを追求したのがモダンダンスだったんです。
「Black Swan」を裸足で舞うというアンチテーゼ
つまり、人外であり、天に羽ばたくものである黒鳥を「裸足」で踊るというのは、その時点ですでに少しアンチテーゼを抱えているわけです。
※私見です。類似の既存作品が全くないわけではありません。
裸足の重要性を整理すると、
- 天=人=地の一体感
- 「人間」としての踊り
- 靴という制約から逃れる自由な身体表現
という点が挙げられます。
黒鳥というコンセプトで、一人の人間の苦悩を表現するというBlack Swanのダンスでは、裸足がどうしても重要だったのではないかと思うのです。
彼らや振付師の方たちが、どこまで舞踊史と舞踊概念を取り入れていたのかはわかりませんが、彼らのBlack Swanに対する本気がひしひしと伝わってきたのは事実です。
Black Swan(BTS Performance ver.)ダンス解説③:振付・構成 ver.のん
hiphop vs. コンテ
改めて振付を見たとき、「コンテじゃん...!」と思ったのがまず第一の感想。
でもよく見るうちにhiphopでもコンテでもないなと思い始めました。
ずっとhiphop色、ストリート色が強かった防弾のダンスがIDOLらへんから変わってきたなぁと思ってはいましたが、別にカテゴライズする必要はないので、Black Swanに関してもそこはそういう認識でいいのかなぁとは思います。
ただ、ベースというか音の取り方はhiphopを基にしてはいるのかなと、各所(ヒット打つところとか)で感じてはいます。
コンテ、というにはウェーブであったり、メルトが多かったり、とここもhiphop寄りではあるかなぁと思いました。
特徴的なのは、これまでの防弾のダンスと比べてターン(綺麗なやつ)とかフロアが多いこと。
あとは、振りそのものというよりは動きがコンテ・バレエっぽいのかなと思いました。
例えば振りの中でもサビに出てくる腕のしならせ方。ウェーブではなく、翼のように腕をなびかせるように動かしてます。
入り・ハケがバレエやコンテっぽいな、とも。
そして一番のユンギパート前と二番のホソクパート、ユンギソロの後が特に顕著だったように思います。
特に6人が上体を下げて円を描きながら舞台上へ入ってくるところなんかは、「白鳥の湖...!」と直感的に感じました。
FAKE LOVEとのリンク
Art Film Performanceが出た時から「FAKE LOVEと重なる」と一部で話題になり、実際に音を繋げたり重ねたりした音源がYouTubeに上がっていましたが、3回目くらいから「振付も似てねぇか?????」と思いようになりました。
Black Swan、振付もFake Loveと重なるとこあるね...?
— おのん⁷ (@n_______n17) 2020年1月31日
さて見てみましょう。
[CHOREOGRAPHY] BTS (방탄소년단) 'FAKE LOVE' Dance Practice
まずあれ?となったのはジンくんの二番でのラスト、片手を横にもう片方は上に伸ばす振り。
まさかのフェイクラではジンくんやってなかったーーー
一緒の振りでいうと、フェイクラではジンくんパートのラスト手を伸ばす直前、両手でウェーブを通すところがあるんですが(練習動画の1:23あたりです、説明下手すぎるわかりにくすぎてごめんなさい)
それと同じ動きをBlack Swanのサビ終わり、足を90°に上げる前のところ(1:51あたり)でもしています。
あと、関連性あったら鳥肌立つなぁと思ったのが、手を繋ぐそして振りほどくところ。
FAKE LOVEではグク×ナムが手を取り合い、Black Swanではグク×ユンギが手をとりあってますが
手を振り払う/一瞬で離すのはFAKE LOVEではグク×ホソク、Black Swanではユンギ×ホソクでした。
となると、役割というか位置的にBlack SwanではユンギがFAKE LOVEのグクポジをするの...?関係性は...?など薄っぺらい考察と終わらない整理が始まってしまうのでそういうのは解析班の皆様に託し(おい)一旦置いておきますね。
でも、こう見始めて比べてみると、踊りや振りの構成がほぼFAKE LOVEとBlack Swanとで同じで、
もちろん曲の長さとか違うから完全に一緒ではないけどそれでも重なるとこ多すぎて鳥肌立ってる…初っ端の全員が動き出してグクがセンターくるところからかぶってるじゃん… pic.twitter.com/BGk3gCzzlW
— おのん⁷ (@n_______n17) 2020年1月31日
衝撃と混乱により日本語おかしくなってる…
言いたかったのは、ど頭の全員の動き始めのタイミングと、そのあとグクがセンターに出てきて踊り始めるタイミングが同じで鳥肌がたった、ということです。
同じような位置にソロパート(二番2回し目のユンギとか)も配置されていたりして、
わからなくなったから図も書いてみた。走り書きでごめんなさいでも構成似てない?
これは果たして偶然かそれとも...?なんて思い始めて鳥肌が立ちました。
Black Swan(BTS Performance ver.)ダンス解説④:振付・構成 ver.スヤ
振付のバレエっぽい要素
びっくりしたのは、バレエの基本的な動きや概念をいくつか取り入れていた点。
ロンデジャンプや足のポジショニング、角度の入れ方などに共通項を感じました。
バレエでは、それぞれの身体の「向き・状態(=方向や角度)」に8つの番号がついていて、厳格にその合わせ方が決まっているのですが・・・。
※参考ページ
Black Swanもそれを利用してレッスンしたのかな?と感じるシーンがいくつかありました。
余談:カル群舞とバレエ要素
角度や腕の高さ全てをそろえ、寸分の狂いもない「カル群舞」を強みとしてきたBTS。同じく「そろえる」ことに意義を持つバレエの群舞には共通項があるな~と。
ジャンル的には今までやっていたダンスと遠かったのかもしれないけれど、まったくの新境地というよりは、実は今までの強みを活かせるダンスだったのかも。なんて思いました。
ソロパートの構成
わたしからは特にのんちゃんほど言えることがないのですが、1つ挙げるならば、バレエを思わせる構成をとりいれてることに驚きました。
ここ!!ジミンのソロパート!!
※該当箇所から再生されます
こういうソロパートの後ろで斜めの列を作ってユニゾンダンスをするのって、アイドルのダンスであんまり見たことなくないですか?
上手奥から下手前に向かう斜めのラインに沿って踊りながら進む、これバレエではあるあるなんです。
この部分に少しびっくりしたのと同時に、クラシカルな舞踊の要素を思わせる構成が上手いなあと思いました。
本当に数秒のことなんですが、ジミンのソロパートにこの構成を充てたことが憎い!!!MV版の舞台の描写とも相まってものすごく効果的だなと感じました。
Black Swan(BTS Performance ver.)ダンス解説⑤:ジミンがすごかった+メンバーのダンス感想
バレエやコンテンポラリーダンスって、基礎の基礎が大事。
というか基礎がなければ踊りが成立しないんです。
とても綺麗な衣装や優雅な舞に憧れてバレエに憧れを持ち、始めたい!と思ったことのある子供は多いと思いますが、過酷な基礎練習に心が折れた経験を持つ方も多いのではないでしょうか。
バレエやコンテでは、いざ習い始めると柔軟とバーレッスン、身体の形の叩き込み、それから足のポジショニングをひたすら続ける基礎練習を繰り返します。(おのんスヤも経験済み)
そして地道さに音をあげて辞めてしまうことが多いんです。
それほどバレエの練習は地味で、味気なくて、でもそれがめちゃくちゃ大事で、ずっと続けることでようやく花が咲く。
きっと防弾のみんなもこの踊りをするにあたって、バーレッスンをひたすら繰り返したと思うんです。
正直、ストリートダンスは形とカウント、そして振りを覚えてしまえばカッコよく見えることもあるし、ある程度誤魔化しが効くと思うんです。(もちろんかっこよくて本当に踊れる人には敵わないけれど)
でも、バレエやコンテってそうはいかないんですよね。誤魔化しが効かない。
何故なら、"踊れる"レベルまで行くのに時間がかかるはずだから。
とてもとても大変だったと思います。
しかも彼らが普段踊っているhiphopをベースとした踊りとは身体の使い方が全て真逆の踊りだから。
それを短期間でものにしてしまう防弾少年団、本当にすごいです。
パクジミン無双
※ジミンペン2人通ります 盲目かつ重いですご了承ください
【のん評】
black swanのパクジミンソロが見れば見るほどすごすぎて辛い、泣きたくなる
— おのん⁷ (@n_______n17) 2020年1月31日
上の項目ですでにジミンさんに触れているので分ける必要あった?と思われるかもしれませんが、書かせてください。(懇願)
タイトルが"Black Swan"な時点で黒鳥、つまりは「白鳥の湖」まで繋がった人は多かったと思いますし、ジミンペンの皆様は「これは、パクジミン、来るぞ...!」ときっと思われたと思うんです。
来ましたね(涙目)
本領発揮してしかない..
まあ何がすごい(と思った)かといいますと、まずど頭。
上体を下げているところからぐっといきなり両手を上に上げ、そこから手首を回しながら落とす振り。
まずこの時点でぐっと見ている側を"Black Swan"の世界観に引き込んでくる。
黒鳥たちがいる、暗い夜の森の情景が頭に浮かぶわけです。
そこから一度ハケて、今度はVとRMと一緒に舞台に戻ってくるわけですが、
立っているだけで妖艶な醸し出すジミンさん、シンメがVさんということもあってさらにダークなのに艶のある雰囲気を出してきます。
でも、そちらの世界に誘ってくるのに苦しそうなんですよね。苦しい、よりは切ない、に近いかな。
そしてその苦しみから逃げ出そうとする姿がその後のサビのジミンパートでやってくる、と。
歌詞見てないんですが(おい)どう考えたって幸せな歌ではないわけです。
が、どこか疾走感があるというか、Fake Loveよりは呼吸ができている気がするというか。
あと、全体を通してやっぱり音の取り方が遅取りだなぁと思いました。もちろんj-hopeさんもなんですが、やっぱりこういう曲だとジミンさんの遅どり具合がわかりやすく見えますね。
(音をしっかり聞いている、ということなので遅どりは良いことだと言われています。溜めがあるから上手く見えるんです。)
そしてジミンソロ。
「しびれた...」という感想をあちらこちらで見ましたが、私もしびれました。(聞いてない)
ジミンさんのソロ見て泣きそうになったのであんまり見ると涙が枯れると思って見たくなかったのですがちゃんと見てみました、(うるさいよ)
そしたらたったの2エイト、6秒しかないんですね…?その短い間で存在感を爆発させるおそろしさ...
何がすごいって、カウントを取っているようで取っていなくてでもやっぱり取っているところと、
6秒間の間にジミンさんの踊りの魅力である動きの柔らかさと滑らかさと硬さとを全てを詰め込んでいるところだと思うんです。
余裕がない表情と踊りをつくる余裕があるところが一番すごいんだよな
— おのん⁷ (@n_______n17) 2020年1月31日
卓越した表現力と、踊り方の強弱と、そして身体のすべてのパーツを自在に使い分けられているところがまさに"パクジミン"というダンサーの凄さであり、私が好きで好きで仕方がないところなのですが、それが際限なく惜しみなく見られたのがこのBlack Swanだったのではないかなぁと思います。
【すや評】
まずジミンを見て思ったのは、足裏の使い方がすごい!
体を床から離さないというモダンダンスの基礎ができていたのがやっぱりさすがだなあと。ジミンのダンスのルーツというか、やはり本格的に舞踊を学んでいた人は足裏の床を掴む力や、足首の使い方がちがうと感じました。
また、目線の動かし方、上体の角度や肋骨の開き・閉じ、せなかの筋肉の使い方など「動き」じゃない方法で感情を表現できるのはジミンの強みです。天才だと思う(推しを手放しで褒める人)
それと、指先まで意識した手の動きの美しさは随一でした。
指先まで神経が通っていながらも、手首には無駄な力が入っていないので、とても優雅に見えます。
普段、ストリートダンスでは「手」を意識することが少ないと思うんです。
バレエでも腕から手の甲、指先に至るまでのラインの美しさを保ちながら踊るようになるには、かなりの訓練を要します。
ジミンの手の表現がとても美しかった。手だけフォーカスで何回も見ました。
あとはつま先の美しさ、足の甲の美しさ、体幹の強さを感じるところなど、しびれるポイントはたくさんあったのですが、長くなりすぎるので割愛します。
〈ジミンのダンスに関する一思考 byすや〉
わたしは、今回ジミンが純粋に「苦しい」って踊りをしてたのが見られてよかったな…と思っていて…。
ジミンには稀にどこか楽曲テーマやarmyを魅せるという使命だとかそういう抑圧的な苦しさもあるのかな、なんて感じる時もあり。勝手な想像ですが…。
そんな中で、今回のBlack Swanは誰にも邪魔されないジミンの苦しみがそのまま直で放出されてる感じがしてとってもよかったです。「コンセプトを表現する」という意識を超えた純粋な苦しみが見られたようで。
いつも「JIMIN」であろうとするジミンが奥底に持ってる感情の解放だったのかな。勝手にそう思って、苦しかったけど嬉しかったりしていました。
防弾少年団のジミンじゃない「踊る一個人」としての苦しみが感じられたのが良かったのかもしれない。見ていて苦しいっていうよりも胸を打たれるっていう方が大きかったです。
あとこの足。つま先。(昇天するジミンペン2人)
ジョングクの完成度
ジョングクは、毎度のことですがホソク・ジミンと違い玄人ダンサーではないのに最高レベルまで踊りを仕上げてくるのが本当に凄い。
しかも、今回のBlack Swanはこれまでの彼らのダンスとは全く性質も踊りも違うわけです。そんな中で、ここまでしっかりと難しいジャンルをものにし、パフォーマンスとして昇華させている...
ジョングクは、メンバーの中でも特にしっかりと鍛えて身体づくりをしていることもあり、筋肉量が圧倒的に多く、そのゴツさが踊りに出ても全くおかしくないと思うのですがそこが彼のまた凄いところでもあります。
ダンサーの筋肉って、外に見えるもの(もちろんあればそれはまた別の種類のカッコよさに繋がるのですが)というよりはインナーマッスルが重要視されると思うのですが、グクはしっかりと筋肉がついているにも関わらず終始動きが柔らかく、全身を使って踊っています。
つまり、全身の筋肉を自在にコントロールできている、ということなんです。
これ、一見当たり前に見えて実は凄いことなんですよね...
グクのパフォーマンスには常に驚かされますが、今回もまたレベルを上げてきたなぁ...と思わざるを得ませんでした。
メインダンサーJHOPE
前述の通り、コンテとバレエをベースにしているBlack Swanのダンスは、j-hopeことホソクが踊ってきたダンスとはいわば正反対のジャンル。
にも関わらず、しっかりとモノにしてきたところがさすがのメインダンサー。
というのも、音楽性だけでなくhiphopとコンテ/バレエでは踊り方が全く異なるのです。
音楽のビートやリズムに合わせ自由に足のステップを組み合わせながら上半身も動かすhiphopとバレエとの違いは一目瞭然かと思うのですが、その他の細かい部分も大きく違っています。
例えば、軸の使い方。
以前もどこかで書いたような気がしないでもないのですが、バレエでは常に髪の毛を一本上に引っ張られているような感覚で立ち、身体の軸が縦に伸びていることを意識しながら踊ります。
逆に、hiphopをはじめほとんどのストリートダンスではこの軸を崩します。
といっても完全に崩してしまうとただグニャグニャで締まりのない、だらしなくただのカッコ悪いシルエットになってしまうので、軸は残しながら柔らかく使うわけです。
また、軸を残しながら首や胸などを動かすアイソレーションを組み合わせて踊るのも特徴です。
hiphopとバレエとでは基礎練ももちろん違います。
「バーレッスン」と呼ばれる、バーを持ちながらプリエ(膝を曲げる動作)をし、腕をゆっくりと動かし、足ポジションを変えながら行っていくのがバレエの基礎練。また、腕や足のポジショニングも厳格に決まっています。
それに対し、ストリートダンスでは音楽のリズムとビートに合わせてまずは膝を曲げて落とし、それに合わせて胸や首のアイソレを行う「ダウン」をはじめとする"リズム取り"が基礎の練習です。
つまり対極です。ここまで正反対の踊りを、基礎なしに踊るのは非常に困難なわけです。
ストリート出身ではあるものの舞踊学校でバレエの基礎を叩き込まれたであろうジミンとは違い、ストリートダンサーとして活躍してきたj-hopeにとって、決して簡単なことではなかったはず。
むしろ、染み付いたストリートダンスの基礎が、彼のストリートダンサーとしての最高の魅力が、今回は踊る上で大きな足かせになってもおかしくなかったと思うのです。
しかしそれを見せず、むしろ指先までしっかりと力を入れ、それでいながら優しい、美しい白鳥の手で踊っていたj-hope、いやチョンホソク。脱帽です。
各々の新境地を見せたメンバーのダンス
ジミンを始め、やはりダンスラインである3Jが無双していたのは事実ですが、他のメンバーももちろんすごかった!!!本当は1人1人詳しく書きたいのですが文字数が爆発してしまったので簡単にまとめました・・・。
JIN
キムソクジンのポテンシャルがすごい。
正直、ジンくんの踊りにとても驚きました。
彼が他のメンバーに比べてダンスが得意でないことは周知の事実だとは思いますが、それを感じさせないパフォーマンスそして存在感だったと思いました。
テテよりもセンターサビで張ってる時間長いし。
もしかすると、hiphopよりも表現力がダイレクトに現れるこういう踊りの方がハマるのかもしれないなと思いました。歌の表情も豊かですしね。
RM
また、ナムジュンもその恵まれた体躯を活かし、魅力的に踊っていました。やはり手足の長さが映えますね。細部まで神経を宿すダンスは、もしかしたら彼にとっては苦手なジャンルだったかもしれませんがそれを思わせない完成度でした。
SUGA
ミンユンギは、意外な表現力を魅せてくれました。彼の感情表現の手法的にコンテ向いてるのではないかと・・・。コンテになじみはなかったみたいですが、普段のラップスタイル・音楽性と相まって、意外な可能性をみました。
V
憑依型パフォーマー・キムテヒョンはやっぱりその表現力が凄まじかったです。
体の硬さもあり、身体的には苦手なジャンルのダンスなのだろうな、という印象がありましたが、彼の凄まじい表現力が身体の柔軟性を超えていくので補えている点がすごい。
Black Swan(BTS Performance ver.)ダンス解説⑥:「Black Swan」というコンセプト
「夜の踊り」by おのん
まず最初の板付ポーズ、基本頭が下がっている様々なポーズから両手を上にあげて少しずつ動き始めるところなんですが、その時に一瞬両腕をしならせる振りがあるんです。
その時のフォルムが「鳥」で。
本当に一瞬なんですが、ここが「人間→鳥」になる動きなのかなと思ったんです。
はじめは。
でも、数回見ているうちに、ど頭と終わりの構成が全く同じことに気づきまして。
アウトロも同じやったで↓
これは人間と鳥がどうやら逆かもしらんぞ...?と思い始めました。
そういえば白鳥の湖ってそもそも夜になるとオデットにかけられた呪いが解けて白鳥から人間に戻れるんだっけ?ということも思い出したりして。
そしてよくよく見直すと振りもど頭とラストの1エイトは同じ動きと振りになっています。順番が逆なだけ。
となると、やはり、タイトルは黒鳥だけど白鳥...?夜の間の踊り...?と思ってしまったわけです。
考察:Black Swanの謎 byすや
「Swan」というのは、バレエをやっていた方はわかると思うのですが、ダンサーにとって非常に特別なコンセプトです。
「白鳥の湖」というバレエ作品では、多くの人がご存知の通り、白鳥(オデット)と黒鳥(オディール)を同じバレリーナが演じます。全く正反対の性質を持つ2つの役を一人で踊り分けるのは、体力的にも精神的にも負担が大きいものの、一度は踊ってみたいと誰もが目指す役でもあります。
曲のタイトルとコンセプトから映画『ブラックスワン』の方に焦点が当たりがちですが、バレエ作品の白鳥・黒鳥のコンセプトの方にも大きく影響を受けているんじゃないか、と思うのです。
白鳥であり黒鳥
最初のパフォーマンスとして公開されたJames CordenのThe Late Late Showでは、舞台セットが森の中でした。
「白鳥の湖」を見たことがある方は、第2幕や第4幕の森の湖畔、白鳥の群舞シーンを思い浮かべた方も多いんじゃないでしょうか。
あれ…?つまり彼らは黒鳥じゃなくて白鳥なの・・・?と思いました。
森の中でもがき苦しむように踊る黒いSwanたち。
そもそも、Black Swan(黒鳥)ってこんなに苦しい踊りじゃないんです。余裕綽々で、残酷なほど美しく、王子を翻弄する。「悪」を象徴する優雅である種傲慢な踊り。
それが、BTSの「黒鳥」は、苦悩や孤独、怒りや哀しみの表情を浮かべ、もがき苦しんでいる。
どちらかというと「白鳥」なんです。黒を纏った白鳥。
「裸足で黒鳥を踊る」というアンチテーゼの話を冒頭でしましたが、ここにもその二律背反の要素が見られます。
突き詰めると白鳥であり、同時に黒鳥でもあるようなBlack Swan。
一見謎でしたが、歌詞を見ることでその表現の理由がわかるような気がします。
「Do your thang(やりたいようにやれ)」
「What's my thang? Tell me now(俺のやりたいことは何なんだ 教えてくれ)」
この歌詞にもあるように、「白鳥であり黒鳥」であるBlack Swanは、相反する感情を同時に抱くアンビバレントな心情を表したコンセプトなのだろうと思います。
余談:マシュー・ボーン版 白鳥の湖との関連性を感じた
マシューボーンの白鳥の湖とは、スワン役を全員男性が演じるという斬新な演出で知られる、「白鳥の湖」の新解釈版です。コンテンポラリーダンス作品となっています。
(男性版スワンレイクと聞くと、トロカデロ・デ・モンテカルロバレエ団を想像する人が世代によっては多いのかもしれないけど違います。)
※これじゃないよ
メッセージ性や白鳥の解釈に近いものを感じたのですが、かなり探してもあんまり関連性を指摘している人がいなかったので、関連性は薄いのかもしれません・・・。
以下マシューボーン版概要。
男性が演じる凶暴な白鳥で人気に
1995年の初演以来、ウエスト・エンドとブロードウェイでバレエ作品としては異例のロング・ランを記録。英ローレンス・オリビエ賞、米トニー賞ほか数々の賞に輝き、世界中で大ヒットした話題作である振付・演出家マシュー・ボーンの「スワン・レイク」が、この冬12年ぶりに初演地サドラーズ・ウェルズ劇場に舞い戻り、6週間の凱旋公演を行う。ボーンを一躍有名にし、アダム・クーパーやウィル・ケンプといった主演ダンサーを世界的スターにしたこの作品で、主役と群舞の白鳥を踊るのはすべて男性ダンサー。「白鳥の中に潜む凶暴性を表現できるのは男性ダンサーだけ」と語るボーン版の魅力とその見所とは一体何だろう。前衛的な芸術を愛する人、既存のバレエを退屈と感じてしまう人には是非見て欲しい。
http://www.news-digest.co.uk/news/features/1367-swan-lake.html
この方が載せているように、振りの構成なども一部似ているんです…!
Matthew Bourne's BTS'
— Sam⁷ 🦖 never your sis (@Morelenmir) 2020年1月29日
Swan Lake #BlackSwan pic.twitter.com/lJHDAeT7dP
あとがき:喝采に代えて
Black Swanは、率直に、ひいき目なしに、「今の防弾少年団」にしかできないパフォーマンスだと思いました。
はじめに書いた「ヒップホップ×コンテ×ラップ」というこれまでになかった要素の掛け合わせはもちろんなんですが、それだけでなく、存在自体がいよいよ唯一無二になってきたんだと思います。
真似しようと思ってもあの表現やパフォーマンスは防弾にしかできないし、いくら完璧に振付や構成を覚えても"踊れ"ても、防弾によるパフォーマンスを超えられる人たちは決していない。
例えば"ラップ×コンテ"をするグループが出てきたとしても、それはきっと防弾からインスパイアを受けたんだなぁと思ってしまうと思うのです。
そこまでに登りつめてしまった防弾少年団、ここまでの道のりを改めて思うと鳥肌が立ちます。
まだMAP OF THE SOUL発売にもなっていなかった時点で、しかもBlack Swanがタイトル曲でもなかったにも関わらず、こんなにも心が揺さぶられたことにのんもスヤも恐れ慄いていましたが、それもまた彼らの凄さであり、恐ろしさでもあり、魅力でもあるのでしょう。
とてつもなく魅了されると同時に、とてつもなく怖いのです。
彼らが今後どこへ行ってしまうのか、彼らに何が待っているのか。
それが余計なお世話だとしても。大丈夫だと信じていても。
ずっと笑っていてほしいし、花道を歩いていてほしいなと、そしてまた彼らと同じ空間と時間を、直接に過ごせる日が早くくることを、願って祈ってやみません。
最高のパフォーマンスを見せてくれる彼らへ
割れんばかりの喝采に代えて。
Written by,
のん すや