こんにちは、すやです。
春の日がMelonで連続チャートイン1000日を迎えましたね!!めでたい。そんな記念に際して!春の日 봄날についてのことを書いた記事をあげたいと思います。
・・・・・と思っていたのですがなかなか文章がまとまらず、せめて年内にはあげよう…ということでぎりぎりにはなりましたが、後編あげたいと思います。
BTSのプロデューサーチームにはファンタジーとSFのオタクがいると思う(後編)
- 봄날(Spring Day/春の日)と Omelas(オメラス)
のお話です。
Spring DayのMVに出てくる謎の看板「Omelas」について引用元を特定しながら考察します!既存の歌詞・MV考察ブログとは、おそらく少々切り口が異なるかと思いますので楽しんでもらえたら嬉しいです。
できるだけわかりやすく書いたつもりではあるのですが、めちゃくちゃ長くなってしまったので、休憩をはさみつつご覧ください!!!ごめんなさい!!
Not Todayとロードオブザリングについて考察している前編はこちら
- 봄날(Spring Day)とオメラスの話
- 考察:オメラスが象徴するもの
- 봄날(Spring Day)と防弾少年団
- 「Omelas」が봄날(Spring Day)で果たした役割
- 봄날(Spring Day)とオメラス ~まとめ~
- あとがき:頭脳派オタク集団 Big Hitエンターテイメント
봄날(Spring Day)とオメラスの話
淡く色彩豊かな映像が美しい「Spring Day」のMV。
場面展開が多く、時系列が錯綜している上に意味深なモチーフが多々盛り込まれています。
今回はこのMVのなかに登場し、印象的なシンボルとなっている「Omelas」を中心に、MVを考察してみたいと思います。
オメラスオメラスって言ってるけど、実際オメラスってなんだったの?と思っている方や、なんか小説から引用したってことは知ってるけど・・・意味はちょっと・・・という方はぜひ読んでみてください~!
引用元:ル・グウィン著『風の十二方位』より 短編作品「オメラスから歩み去る人々」
原題:The Ones Who Walk Away from Omelas
「The Wind’s Twelve Quarters」(1975、Harper & Row)収録
- 作者: アーシュラ・K・ル・グィン,丹地陽子,小尾芙佐,浅倉久志,佐藤高子
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 1980/07/25
- メディア: 文庫
- 購入: 3人 クリック: 63回
- この商品を含むブログ (33件) を見る
「オメラスから歩み去る人々」は、文学的な分類でいうと「ユートピア文学」「ディストピア文学」と呼ばれるジャンルの作品。文庫本にして12ページほどの短編小説です。
オメラス(Omelas)とは
オメラス(Omelas)とは、アーシュラ・K・ル=グウィン*1の著作『風の十二方位』に収録されている「オメラスから歩み去る人々」という短編物語に登場する街の名前です。
オメラスは「理想郷」とされる架空の都市。美しく平和で幸福な街だとされています。
此処ではない何処か遠い場所に、オメラスと呼ばれる美しい都がある。
オメラスは幸福と祝祭の街であり、ある種の理想郷を体現している。
そこには君主制も奴隷制もなく、僧侶も軍人もいない。人々は精神的にも物質的にも豊かな暮らしを享受している。祝祭の鐘の音が喜ばしげに響き渡る中、誰もが「心やましさ」のない勝利感を胸に満たす。子供達はみな人々の慈しみを受けて育ち、大人になって行く。
素晴らしい街。人の思い描く理想郷。
オメラスから歩み去る人々 あらすじ
※つまみ読み向けに色字(グリーンとブルー)のところだけ読めばだいたい把握できるようにしてあります!読み飛ばしたい方はそこだけ読んで・・・!
幸福で完璧な町、オメラスはその幸福を守るために、たった一つの条件がありました。
オメラスのある美しい公共建造物の地下室に、でなければおそらくだれかの宏壮な邸宅の穴蔵に、一つの部屋がある。部屋には錠のおりた扉が一つ、窓はない。…
その部屋の中にひとりの子どもが坐っている。男の子とも女の子とも見分けがつかない。年は六つぐらいに見えるが、実際はもうすぐ十になる。…
その子はもとからずっとこの物置に住んでいたわけではなく、日光と母親の声を思い出すことができるので、ときどきこう訴えかける。「おとなしくするから、出してちょうだい。おとなしくするから!」
—『風の十二方位(ハヤカワ文庫 SF)』より「オメラスから歩み去る人々」から引用
その子は知能が低く、世話もしてもらえず、栄養失調の状態。不衛生な地下室にただひたすら閉じ込められています。
その子がそこにいることは、みんなが知っている——オメラスの人びとぜんぶが。…とにかく、彼らの幸福、この都の美しさ、彼らの友情の優しさ、彼らの子どもたちの健康、学者たちの知恵、職人たちの技術、そして豊作と温和な気候までが、すベてこのひとりの子どものおぞましい不幸に負ぶさっていることだけは、みんなが知っているのだ。
—『風の十二方位(ハヤカワ文庫 SF)』より「オメラスから歩み去る人々」から引用
オメラスのすべての人の幸福と平和を守るためには、一人の可哀そうな子どもを虐待し、閉じ込め続けなければならないというおぞましい条件がありました。
もしその子の体を洗いきよめ、おなかいっぱい食べさせ、慰めてやることができたら、どんなにかいいだろう。だが、もしそうしたがさいご、その日その刻のうちに、オメラスのすべての繁栄と美と喜びは枯れしぼみ、ほろび去ってしまうのだ。それが契約の条件である。…
条件は厳格で絶対だ。その子には、ひとことの優しい言葉さえかけてはならぬことになっている。
—『風の十二方位(ハヤカワ文庫 SF)』より「オメラスから歩み去る人々」から引用
街の人全員が、一定の年齢になるとこの事を知らされ、閉じ込められた子どもを見せられます。
はじめは自分たちの幸福を維持するために、一人の人間の犠牲を黙認してもよいのかと葛藤を抱えますが、たった一人を救うためにオメラスのすべてを滅ぼすことはできないという結論にいたり、最終的にはオメラスの街のほとんどすべての人たちがそれを受け入れるのです。
MVに突然登場した謎の言葉「Omelas」は、実はこのように業の深いテーマを持っていることがわかることでしょう・・・。
それでは、このオメラスがSpring Dayにもたらした意味について考えてみたいと思います。
※ここから以下の章は1ファンによる考察となります。 正解でも公式見解でもありません。個人の解釈にすぎないことにご留意ください。
考察:オメラスが象徴するもの
解読のキーポイントは?
オタク集団Big HitがMVにわざわざ「Omelas」を引用するのであれば、原作の本質的な読み込みがされているはずです。(設定だけ借りてくるだけでは満足しないのがBig Hitチームだと私は勝手に思っています)
OmelasとSpring Dayのどこがリンクしているのかを、引用元の作品を踏まえて考察してみたいと思います。
オメラスの暗部 "閉じ込められた子ども"が象徴するもの
原作「オメラスから歩み去る人々」における"閉じ込められた子ども"は、本来オメラスで起こりうるはずだった、全ての痛みや苦しみ、不幸を背負った存在です。
子どもの存在とともにオメラスの街の人々に忘れられた苦しみや不幸は、本当は避けられないはずだった現実。
現実と引き換えに幸福を手に入れたオメラスは、どこか幻のような空虚さを抱えています。
Spring DayのMVの中では「RUN」のMVを思わせる場面描写があります。
ケーキを投げ、大騒ぎをし、一見賑やかで楽しそうな彼らは、カットが変わると物憂げな不思議な表情を浮かべている。
花様年華ストーリーで起こった数々の「痛みや苦しみ(=悲劇的なできごと)」がなかったかのような幸せな場面。
その合間、ふとした瞬間に笑顔を失う7人は、オメラスの街の人々が抱く「空虚な幸福」と似たものを感じます。
この挿入シーンは断片的かつ短いもので、この後、積まれた古着の山や電車のシーンへとMVは移り変わっていきますが、印象的なシーンであることは間違いないでしょう。
ほんの少し、セウォル号との関連性も考察してみる
この曲「Spring Day」はセウォル号沈没事件をモチーフに織り込んだ曲だというのは有名な話です。
オメラスの地下室に閉じ込められた子どもは、犠牲となった高校生たちを連想させるという感想も多く見られます。(※ARMYのツイートやブログより)
最大多数の幸福のために犠牲にされた弱者を象徴する「Omelas」のモチーフを持ってきたことは、かの事故への憤りと悲しみ、そして批判でもあったのでしょうか・・・。
「オメラス」から歩み去る防弾少年団
MV最終シーンでは、電車に乗ってメンバーたちがどこかへと向かっています。
電車が到着した場所は、1本の木がぽつんと立っているだけの寒々しい荒れ野。
実はこのシーン、オメラスの外の描写とリンクを感じさせる場面。
原作「オメラスを歩み去る人々」では、オメラスの周りには荒野が続いており、幸福とはかけ離れた貧しい土地であることが示唆されています。
原作の表題となっている「オメラスを歩み去る人々」とは、ひとりの子どもを犠牲にして成り立つ「Omelas」に疑問を抱き、自分の意思で街を出ていく人たちのことです。
時によると、穴蔵の子どもを見にいった少年少女のうちのだれかが、泣いたり怒ったりして家に帰ってはこないことが、というより、まったく家に帰ってこないことがある。また、時には、もっと年をとった男女のだれかが、一日二日だまりこんだあげくに、ふいと家を出ることもある。
こうした人たちは通りに出ると、ひとりきりで通りを歩きだす。彼らはそのまま歩きつづけ、美しい門をくぐって、オメラスの都の外に出る。
—『風の十二方位(ハヤカワ文庫 SF)』より「オメラスから歩み去る人々」から引用
暖かく美しい街オメラスとは真逆の荒れ果てた土地に踏み出していく「歩み去る人々」は、幸せだったであろう場所を去り、電車に乗って寒々しい荒野へ向かう防弾少年団とどこか被ります。
それぞれに、ただひとりきりで、彼らは山々を目ざして、西か、または北へと進む。彼らは進みつづける。彼らはオメラスを後にし、暗闇の中へと歩みつづけ、そして二度と帰ってこない。彼らがおもむく土地は、私たちの大半にとって、幸福の都よりもなお想像にかたい土地だ。私にはそれを描写することさえできない。それが存在しないことさえありうる。しかし、彼らはみずからの行先を心得ているらしいのだ。彼ら—オメラスから歩み去る人びとは。
—『風の十二方位(ハヤカワ文庫 SF)』より「オメラスから歩み去る人々」から引用
誰かを犠牲にして成り立つ幸福を受け入れず、オメラスから歩み去る人々は「オメラスにとどまる人々」にとっては当てのない旅に出るように見えるのかもしれません。
ですが、彼らはみずからの行先を心得ています。彼らが目指すのは誰かの幸福のために誰かが犠牲にならない土地。幸福の都からは想像もつかない貧しい土地であろうと、彼らは歩みを止めません。
Omelasを立ち去る人々を思わせるSpring Dayのラストシーン。
前述したセウォル号沈没事件のことも踏まえると、このシーンは「誰の苦しみも忘れない」という防弾少年団の決意のようにも感じます。
To them, outside of Omelas is ‘a place where no one’s pain is forgotten’, and their spring day is ‘the time not forgetting someone’s sorrow’.
(和訳:彼らにとって、オメラスの外は「誰の痛みも忘れられない場所」であり、彼らの春の日は「誰かの悲しみを忘れない時間」です。)
↑この章を書き終えた後に、ほぼ同じことをもっともっと素敵な言葉で綴っているブログをみつけたのでご紹介します。
余韻の残るラストシーンについて:「行きっぱなし」の物語
ところで、子どもが好む絵本の構造には「行って帰ってくる」という性質があります。
どこかに出かけた登場人物がきちんと元の場所に戻ってくる描写は、安心感を覚えるのだそうです。逆に「行きっぱなし」の物語は解決しない余韻が残り、不安を与えるのだとか。
これは幼い子供だけでなく、大人にも多少影響する心理のようです。
Spring DayのMVは、いわば「行きっぱなし」の物語。
「オメラスから歩み去る人々」も行きっぱなしの物語です。歩み去る人々が、“オメラスを後にし、暗闇の中へと歩みつづけ、そして二度と帰ってこない”ように、7人も偽物の幸福であった「Omelas」の建物に帰ることはおそらくないのだろうと考えられます。
そして電車でたどり着いたのは、終着点とも言えない見知らぬ土地でした。
「行きっぱなし」の描写を用いることで、彼らの歩みは道半ばであることや、解決しない問題、忘れられない存在を感じさせることができます。
その効果もあり、Spring Dayがより強く記憶に残る、忘れられないMV・楽曲となっているのでしょう。
봄날(Spring Day)と防弾少年団
世間に異議を唱える「学校三部作」から変わらない彼ら
抑圧された世界に「NO」を突き付けるバンタンの意思がより色濃く反映された楽曲、「N.O」。2019年MAMAでもパフォーマンスされ、再び注目を集めましたね。
어른들이 하는 고백 너넨 참 편한 거래
大人たちがする告白 お前らは楽してるんだって
분에 넘치게 행복한 거래 그럼 이렇게도 불행한 나는 뭔데
もったいないぐらい幸せだって ならこんなに不幸な俺はなんなんだ?(中略)
어른들은 내게 말하지 힘든 건 지금뿐이라고
大人たちは俺に言う 辛いのは今だけだって
조금 더 참으라고 나중에 하라고
もう少し我慢しろって 後回しにされてEverybody say NO!
더는 나중이란 말로 안돼
もう「後で」なんてない
더는 남의 꿈에 갇혀 살지마
もう他人の夢に閉じ込められて生きるなWe roll (We roll) We roll (We roll) We roll
Everybody say NO!
この時から自分たちを取り巻く環境に違和感を持ち、抑圧的な大人や学校社会に疑問を投げかけていた防弾少年団。若者の目線ではっきりとNOを突きつけています。
学校社会にNOを突き付けた少年期からのアップデート、世界の広がり
少年期からのアップデート
「自分の人生は自分のものだ」「それは本当の幸せなのか」「おかしいものはおかしいと言って何が悪い」と語り掛ける彼らのスタンスは、音楽性が変化し、Love Yourselfシリーズを通して楽曲がだいぶ柔らかくなった今も変わりません。
大人になった彼らは、それでも「大人」に迎合することなく今でも社会に疑問を投げかけた曲を歌い続けている。逆に、大人になっていったことで視点が学校組織という小さい枠組みから社会全体にアップデートされているのが見られます。
また、自分を押し込めようとする「外部」に対する反発だけでなく「どうしたら幸せになれるんだろう」と問いかける、より内省的な歌詞も増えましたよね。
少年期からのアップデートによって、現状をただ「NO」と否定するだけではなく、他者に寄り添うような楽曲も増えたと思います。
普遍的なテーマによる世界の広がりの一方で、視点はマクロからミクロへ
また、取り上げるテーマやモチーフも、韓国国内にとどまらず、さらに多くの人々が共感できるような、より普遍的なものになりました。
「Spring Day」は、確かにセウォル号沈没事件をメインテーマにおいた楽曲かもしれません。しかし、MVの中にセウォル号のモチーフだけでなく「Omelas」を取り入れたことで、彼らが表現したいことが韓国国外の世界に伝わりやすくなったと考えられます。
「オメラスから歩み去る人々」は単なるファンタジー小説ではなく、現実社会にも通ずるテーマを寓話的に取り上げた作品として、英語圏を中心に評価されており、実は知名度の高い作品です。
マイケル・サンデルの有名著作「これからの正義の話をしよう」でも取り上げられ、功利主義を扱う上で有名な題材とされています。
・・・と言っても防弾少年団のファン層が当たり前のようにオメラスを知っているとは思わないのですが・・・。それでも調べればある程度の情報がまとまって出てくる概念なので、共通言語として用いても問題はないモチーフだとは思います。
봄날(Spring Day)は静かな「NO」と誰かの痛みに寄り添う曲
Spring Dayでは「Omelas」を歩み去る7人が暗示されてはいますが、別に「Omelas」をぶち壊して進んでいくわけではないんですよね。これが学校三部作あたりに作られたMVだったら、「Omelas」の建物の破壊の描写なんかもあったのかもしれません。
理想郷も誰かの幸せである以上、何も考えず無責任に打ち壊すことはできないけど「自分たちは受け入れられない」という静かな決意と「誰の悲しみも痛みも忘れない」というメッセージが込められていたとしたら、この曲は本当にすごいなあなんて思います。
「N.O」から花様年華シリーズ、「WINGS」シリーズを経て大人になっていった防弾少年団は、理不尽な社会を否定するだけでなく、誰かの痛みに寄り添うような、ミクロ視点の音楽性に少しずつ変化していきました。変化と言うより進化と言った方がいいんだろうか。
その音楽性の進化の始まりがSpring Dayだったとも言えるのかもしれません。
↑たとえ最強でなくても誰かのヒーローでありたい防弾少年団。
그래도 난 영웅이고파
それでも俺は英雄でありたい
줄 수 있는 건 단팥빵 과 수고했단 말뿐이다만
あげられるものはあんパンと"おつかれさま"だけだけど
부름 바로 날라갈게
呼ばれたらすぐに飛んでいくから
날 불러줘
俺を呼んでよ
「Omelas」が봄날(Spring Day)で果たした役割
ここまで散々語っておいてなんですが、「Omelas」なんて実は歌詞に一言も出てこないわけです。
だからといって「Omelas」が楽曲と無関係というわけではありません。MV(映像)が音楽を補完し、二重にも三重にも意味を与えたことが、この曲がここまで愛される所以だと思うからです。
MVを作ることの効果を最大限に生かしたのがSpring Day
映像(モチーフ)と楽曲をリンクさせて上手く消化しているのがSpring Day。
前編記事でBig Hitが原作のあるモチーフを引用するとき、「ストーリーテリングの巧さ&掛け合わせのマジックがすごい!!!」と言う話をしたのですが、それは今回の「Spring Day」にもしっかりと表れています。
結論から言うと・・・
楽曲が深いテーマと切り口で社会に疑問を投げかけるような構図になっている。
その上で、花様年華~WINGS、そしてLove Yourselfシリーズに連なる作品群の一曲としてきっちり組みこんだ、その手腕に拍手!!!
3つの要素で構成されていると考えられる「Spring Day」。
①既存のBTS Universeオリジナルストーリー(花様年華~WINGSに連なる物語群)
×
②防弾少年団自身のストーリー(リアル要素:作詞者の個人的エピソード等)
×
③楽曲コンセプト(楽曲自体のオリジナルコンセプト+セウォル号という裏テーマ)
これ1曲でやる情報量じゃないですよね。
これら複数のばらばらな要素をつなぎ合わせるとき、音と歌詞で補完できない部分を担っているのがOmelasや、その他MVに登場する数々の他作品からの引用モチーフです。
「Spring Day」は、普遍的なテーマ(最大多数の幸福への疑問と脱出)を取り上げながら、政治的な問題にならないようなささやかさでセウォル号沈没事件に関連したモチーフを取り入れ、楽曲に犠牲者への追悼とやりきれなさ、批判を巧みに織り込んでいます。言葉ではっきりと批判することができなくても、モチーフがそれぞれの意味を持ち、言うに言えないことを語っている。読み手に解釈を委ねているようでありながら、その意図は明確です。
また、メンバーが作詞作曲に携わり、フレーズを担っていることで、防弾少年団自身のストーリーとしてもきちんと消化され語られている。
さらに、花様年華を思わせるシーンを挿入することで、BTSストーリーの流れにも上手く組み込まれています。
複数の要素が乱立する曲でありながら、映像表現を利用して「オメラス」や他の複数の視覚的・概念的なモチーフを用い、それぞれの要素のギャップを埋めるようにまとめあげていったという点がすごい。ビッヒ所属のアーティストスタッフって世に物申したいことがいっぱいある人が多いんだろうな・・・
ビッグヒットが、ひとつの楽曲を複数人の協議制で作っていること、そしてオタクスペシャリスト集団である妙がここに存分に発揮されていて面白いな~~~!と思っています。
봄날(Spring Day)とオメラス ~まとめ~
Spring Dayは、楽曲を通して言いたいこと・やりたいことを、オメラスを軸にして結び付け、上手くまとめ上げた秀逸楽曲です。
今回は歌詞のこととセウォル号のモチーフと思われる描写*2にはあまり触れずに、オメラスにのみフォーカスしてまとめてみました。
とりあえず今回はSpring Dayの歌詞は全無視してしまったし、セウォル号との関連とかもっと複雑に絡み合う伏線やら制作者の意図やらがたくさんあるみたいだし、解釈は無限にあることでしょう・・・。
一つのモチーフ(引用元)から発展させる、こういう読み解きかたもあるよ!という話でした。
ここまでたどり着いてくださった方、本当にありがとうございました。長かったですよね・・・
あとがき:頭脳派オタク集団 Big Hitエンターテイメント
前編後編をまとめた感想を言うと、愛とリスペクトを持って色んな作品のエッセンスを取り入れるのが上手いオタクがビッヒのプロデューサーチームの中にいるんだろうなあと思います。
ファンタジーとかSFのオタクがいなかったら『花様年華』とか『WINGS』なんてとち狂ったストーリー生み出されてないよね!!と思います。いつもありがとうございます!!
ユングしかりフロム然り、哲学・心理学に影響を受けている人もいるんだろうなあ、そういう文学的プロデューサーを抱えているのも怖いし、それらを7人のリアルと巧いことリンクさせてまとめ上げる力がすごい・・・ビッヒ本当に怖い・・・。
ありがとう!!今後もそういう曲出したら考察するね!!!!よろしくお願いします!!!!!
つぶやき:ル・グウィンとトールキン(そしてヘッセ)を履修しているビッヒPDは誰や
パンPDニム?P Dogg?それともナムジュン?!まあユンギさんやジェイホ―プではないでしょうという気持ちisある
本棚と好きな映画の傾向が同じなので仲良くなれると思います、友達になってください!!!!!!(無理)
おわり~~~~~!
頑張って書いた・・・10100字ピッタ!