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3人の限界Kドルオタによるあれこれ

【すや】BTSのプロデューサーにはファンタジーとSFのオタクがいると思う(前編) ーNot Todayとロードオブザリングの話ー

こんにちは、すやです。

今日は防弾少年団の楽曲のインスピレーション元についての話をしたいと思います!

防弾少年団のPDチームには絶対ファンタジーとSFのオタクがいると思う

この2本立て+αを前編・後編に分けてお送りします!

今回はこれ!

すでに楽曲とかMV内のモチーフを読み解いてくださっている先人の方々はたくさんいるので、私は解読・解釈ではなく原作を語りつつ、「この引用がなぜ熱いか」ってことをつらつら説明したいと思います。

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つまりはWINGS・YNWA期がツボだという話になるのかもしれない

防弾少年団の楽曲と引用・インスピレーション元

防弾少年団の楽曲って引用元とか深堀りしてメタファー追っていくと解釈かなり難しいですよね。

そもそもインスピレーションを受けている題材がハイコンテクスト
毎度新しいコンセプトが出るたびに頭を抱えているARMYも多いのではないでしょうか? 私は毎度頭を抱えています

 

防弾少年団はオリジナリティ溢れる楽曲を生み出していますが、だいぶ文学的・哲学的な影響を受けています。

  • Map of Soul: Personaユング心理学
  • Love Yourselfシリーズエーリッヒ・フロム『愛するということ』
  • WINGSシリーズヘッセ『デミアン

Big Hitエンターテイメントがどれだけオタク集団かがわかる…怖い…

人文系のオタクがいるでしょ絶対 学者肌のオタクって怖いんだよなあ

 

心理学・哲学・世界各国の神話・民俗学・神学あたりからの影響は、先人たちがかなりいろいろな方面から読み解いてくれているのですが、実は彼らBTS、ファンタジー・SF界隈からの影響も結構すごいのです。

実はわたくしすやは、筋金入りのファンタジーオタクでありまして。海外児童文学レーダーにこの曲が初回視聴でド引っかかったので、記事を書きたいと思い立ちました。

引用元を特定しながら語りたいと思います〜!

 

Not Todayとロードオブザリングの話

みんなだいすき 총! 조준! 발사!


Not Today熱い・・・!すき!!だいすき!!!!

曲が好きな理由なんて無限にあるし、言語化できなくて エエ゛…メッチャスキ…みたいになることがほとんどなんですが、Not Todayに関してはものすごい文字数で語れます。

この曲が大好きで死ぬほどかっこいいと思うのはなぜかというと、

私が大好きで大好きで大好きな映画ロードオブザリングLotR屈指の名シーン、クライマックスの黒門の戦いの名演説にインスピレーションを受けているからです!!!!!!!!!!!!!!!

どういうことなのか解説します。

 

引用元:映画ロードオブザリング王の帰還』より 黒門の戦いでのアラゴルンの演説

Sons of Gondor! Of Rohan! My brothers.
I see in your eyes the same fear that would take the heart of me.
A day may come when the courage of Men fails, when we forsake our friends and break all bonds of fellowship, but it is not this day.
An hour of wolves and shattered shields when the Age of Men comes crashing down, but it is not this day!
This day we fight!
By all that you hold dear on this good earth, I bid you stand, Men of the West!

※引用特定ソース:20170502 Music Choice Behind the Line of Not Today ナムジュンの発言より

 

これ、最大限に追い詰められた絶体絶命のシーンでの演説(セリフ)なんです。

ロードオブザリングは、魔法の指輪*1を壊すために火山に捨てに行く、ということが最終目標のものがたり。原作はトールキンの『指輪物語』だよ

Not Todayが引用している上記の演説は、映画3部作の終盤のシーンです。

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ロードオブザリング 王の帰還

【上記のシーンに至るまでの超簡単なストーリー】

悪の軍勢となんども大きな戦いを経て、主人公サイドの死傷者は多数。
もういよいよ力が尽きて、平和な世が完全に終わってしまう。この状況をひっくり返すには指輪を破壊する以外方法がない

でも指輪を破壊するには、敵地ど真ん中にある火山のマグマに指輪を投げ入れなければならない・・・(※魔法の指輪なので特殊な壊し方が必要)
指輪を運ぶ途中で捕まりでもしたら、指輪が敵サイドに渡ったら、その時点で終わり
八方塞がりの状況です。

そこで最後の一手として実行されたのが「黒門の戦い」
敵軍の最大の拠点(黒門)に攻め入ることで、仲間が指輪を破壊する間、火山から敵の目をそらすという陽動作戦です。つまりは大規模な囮作戦・・・

そんな捨て身の最終決戦の前に怖気づく戦士たちを奮い立たせるため、王族の末裔でありリーダーである青年アラゴルンは語り始めます・・・。

 
指輪を破壊すべく火山近くで身を隠しながら頑張っている仲間のために、死を覚悟した戦士たちが黒門前に集結するシーンは物語のクライマックスです。

3部作の終盤・・・登場人物はみんなもう満身創痍でボロボロ。人数も敵より全然少ないし涙

最後の戦いに咆哮をあげる戦士たち・・・・・・・

皆死に絶え、いつか終わりを迎えるかもしれない

勇気が挫けて仲間を見捨てる日が来るかもしれない

でも今日ではない!今日は戦う日だ!!! 

そんな名シーンからの引用!!!!!!!!!

兼オタ涙目!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

 

正直こんな重たいシーンからの言葉をよくも引用したな・・・と最初は思ったこともありました。が、

ビッヒのすごいところは引用元を殺さずそして防弾少年団としての自我も殺さず、双方の良さを掛け合わせて熱い展開に持っていくところ!

Not Todayの何がすごいと感じるのか解説します。※すやの持論だよ、公式見解じゃないよ

 

Not Todayのすごいところ

ストーリーテリングの巧さ

Not Todayがすごいのは、この(ロードオブザリング履修者にとっては)ものすごく重い印象的なシーンを引用したうえで、防弾少年団自身のストーリーとリンクさせて昇華しきっているところです。

 

引用元のロードオブザリングでは、明日への希望も見えないギリギリの場面で語られる「でも、今日ではない」という言葉。

終わるのは今日ではない=だから今は戦え、生きろと強く訴えかける言葉です。

 

じゃあバンタンは??

アイドルって、芸能界って、音楽界って正直水モノです。今日人気だからって明日もそうとは限らない。何が理由でどうなるかはわからない。防弾の歌詞って結構そういう不安を歌ったものって多いですよね。

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それでもNot Todayは力強く「それは今日じゃない 俺たちを信じてついてこい」と、そういうメッセージを持った曲です。

 

너의 곁에 나를 믿어  

Together we won't die

나의 곁에 너를 믿어 

Together we won't die

함께라는 말을 믿어  

本来の引用元の言葉が持つ背景と意味、そして彼ら防弾少年団のリアルが歌詞によって強く結びついて共鳴した結果、こんなにもエネルギーのある曲に仕上がっているんだと…兼オタ的には思います………(涙の海)

 

原作へのリスペクトも忘れない・原作のエッセンスを勝手に書き換えないのと同時に、自分たちの「リアル」もしっかり足して、これは確かに防弾少年団の曲だ!と言える一曲になってるのは流石だなあと思います。

互いを信じて進んでいこうという強い意志が見える曲。バンタンらしいね・・・

Not Todayの歌詞って読み込んだら泣いちゃうよね。

 

リパッケージアルバムの中できっちり真価を発揮してる曲

Not Todayってたぶんロードオブザリングの情報を持たずに聞くと、割と「リアル寄り」の方の楽曲ですよね。自分たちのアイドル人生について語っているのかなあっていう歌詞もあり。

なので曲自体が持つエネルギーとかテーマはMic Dropとかサイファーとかに近いのかな、と思います。(私見です)

ただ、アルバムコンセプト的に、WINGSシリーズの錚々たる超芸術重厚楽曲群に挿入するにはただの「リアル寄り」だと印象がやや弱い・・・。
各ソロ曲の圧と闇と世界観がすごすぎて!

 

Boy Meets Evilに連なる、現実離れしたファンタジックな世界観に確かに揃えたいよね!!

こんな怖いイントロで始まって、血汗涙が来て、ソロ曲群があって・・・という中で、いきなりリアル寄りな青年の主張曲がぽんっと一曲入ってたら浮いてしまいそう。

というか浮けばまだいい方で、もしかしたら他の曲に呑まれて全く印象に残らず終わる可能性もありました…。 "リアルな主張枠"にはすでにCypher 4が控えてますし・・・

 

血汗涙とかBMEとか、その辺りのイントロやタイトル曲にも負けない、リパッケージアルバムに収録する新曲として(はたまたツアーにも挿入できる新曲として)印象を残せるインパクトのある曲調と設定・・・・・・ヴヴン難しいね・・・

そこで生きるのが有名作品からのエッセンス引用

賢い!!!!!!!!!!!

元々ある壮大なストーリーからインスピレーションを受けることで楽曲に深みが増すんですね~

しかも0から設定構築しなくてもこうやってオタクが深読みしてくれる!

無理やりMVでこじつけなくても、言わんとする世界観が補完されていく!

その辺り全部計算済みなんだろうな・・・ビッヒ本当に怖い・・・

 

キラーパートに「총! 조준! 발사!」というフレーズを持ってきたところが憎い

ロードオブザリングは基本的に剣!弓矢!魔法!の世界なので、銃なんてものはないです。

ここで「銃」というモチーフを持ってきて、一気に世界観をアップデートしているところが上手いなあとめっちゃ思う。

 

Not Todayとロードオブザリングの関連性って、そこまで重めのLotRオタクじゃなくても、映画を2~3回みている映画ファンであれば、歌詞を調べて「あれ・・・?」ってなるくらい明らかなのです。

公式発言してるソース探すまでもなく、この歌詞って・・・あれだよね?ってわかっちゃうくらい直接的にリンクしてます。
これってすごい危険。防弾らしさが打ち消されてしまう、微妙な印象の曲になる可能性だってあるわけで・・・でも!!

「총! 조준! 발사!」のおかげで、頭の中に形成されるイメージはあの映画とは全く違う印象になる!ここがすごい。

突然の銃!照準!発射!!!

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推しのキラーパート

ここまで強烈なシーンを引用しておいて、防弾少年団の楽曲としてオリジナリティが確立されている!!良い意味で引用元の作品に思いをはせつつ、防弾の楽曲としてがっつり楽しむことができる!!

このアップデートがすごいです。

このエッセンスだけを良い感じに取り入れるっていうのは、ちゃんと原作読み込めてないとできない・・・。

ロードオブザリング絡めようって思いついた人たぶんLotRの強オタク

このプロデュースはもともとの作品愛してないと成り立たないと思います。だってLotRをちゃんとわかって愛してる人じゃないと適当な焼き増しになるか、文脈をわかってない形での引用になる可能性が高いから・・・。

(原作やインスピレーションもとが明らかになっている作品、オマージュって原作ファンからしたらちょっと怖いですもんね。)

 

前編:かるくまとめ

Not Todayは、原作へのリスペクトと同時に強烈なバンタン・アイデンティティも感じます。

ビッヒはこういう掛け合わせのマジックが本当に上手い!

 

余談ですが弟くんたち(TOMORROW X TOGETHER)の新曲、ファンタジー世界観ぽいし、こんな感じでインスピレーションを受けてる作品があるんじゃないかと予想しています!わかったら書こうかな~~~楽しみだ~~~

 

Not Todayほんとうにすきだ!!!!!!!!!

 

 

Spring Dayについて考察した後編はこちら

mi-casa.hateblo.jp

*1:手にした人全員を狂わせて破滅に向かう強大な力を持ったヤバイ指輪