大変にお久しぶりです。生きています。すやです。
ありがたく申し訳なくも読みたい!と声をかけてくださる方もいらっしゃったのに長らくご無沙汰しておりすみません。
久しぶりではありますが、今回(も)ライブレポや実のある音楽の話とはちょっと遠い文章になります。申し訳ないですが、そっと置いておくのでお付き合いいただける方がいれば。
よろしくお願いします。
結論から言うとATEEZの歌のちからが凄くていつも救われてしまう、という話です。
色々と爆発して本当に勢いで書いてしまったので、後日、具体的な音楽の該当箇所などを追記します。ごめんなさい・・・。
前記
ATEEZの音楽の特徴を簡潔に表すのであれば、「多彩」「スケール」「ドラマチック」という3つのキーワードが浮かびます。言葉にしてしまうとちょっとありきたりな感じがするかもしれませんが、実際にリリースされた曲たちを見てみると、かなり色彩も色調もバラバラで「いろとりどり」という言葉がしっくり来る感じ。
そして音楽世界のマップが広いというか、楽曲のスケールが大きい点もよくわかる。叙情的なメロディラインがはっきりと描かれている楽曲も多く「ドラマチック」つまり物語性が高いのも頷けるかと思います。
その多彩さやスケールの大きさ、物語性の高さには、もちろん楽曲制作陣の音楽性の幅の広さや表現力の高さ、チャレンジングな制作環境にも大きな要因があると思いますが、楽曲を歌うATEEZのボーカル個性にもかなり大きなウェイトがあるのではないかと、ずっとずっと感じていました。
ATEEZの音楽には、ストーリーを知らなくても、コンセプトフォトを見たことがなくても、音だけでも伝わる物語性があります。
それは8人の声が、それぞれにしかできない役割(ロール)を以て曲を構成しているから。各人がそれぞれにしかできないパートをこなしているからこそ、音楽が多彩な輝きを放ち、奥行きを持っていくのでしょう。
このボーカルの不思議な構成について、ATEEZの曲をたくさん聴くようになってからはずっとずっと不思議に思って耳に刻んでいたのですが、とある曲のリリースからはっきりと感覚として掴めたような気がしてきました。
自分の備忘録に近いのですが、言葉にしてまとめてみます。
ATEEZの不思議なボーカル構成
ATEEZはかなり声質の響きがばらけていて、それぞれが音楽の中でロールを持っている、そんなボーカルたちです。
ジョンホのまっすぐ心に突き刺さる光の矢のような声質、サンの鋭利に研ぎ澄まされたクリスタルみたいな声質、ホンジュンの目の前を切り拓くプラチナみたいな輝きのある声質。
ソンファの深みがあって滑らかさとざらつきを兼ね備えた声質、ユノの澄んでいるけれど響きの幅が広い帯のような声質。
ウヨンの空気を多く含む高くて甘い声質、ヨサンのつるっと硬質でありながら温かみのある耳触りの良い声質。
そしてミンギの曲の座標を丸ごとひっくり返すような強い磁力を持った低くインパクトのある類稀なる声質。
ATEEZの8人は、個性が強く、かなり異質に響き合う声質の集団です。
だからこそ、声質の組み合わせやパートの繋ぎ方によって音楽がかなり大きく動き、うねる。声に物語を生む力があるのだと思います。
ATEEZの声について
ATEEZは、このように声の個性がかなりばらけているグループでありながらグラデーションのように並べることもできます。
〈個人的な聞こえのグラデーション〉
ホンジュン~ジョンホ~サン
→貫く光・光のように速く真っ直ぐ届く声質+α:熱さ・儚さ
~ユノ~ソンファ
→変幻自在の水・置かれる場所によって変わる声質
~ミンギ
→磁場を狂わせる異質な声質+α:カタルシス
+ウヨン、ヨサン
→特異点・転換点となる変化の声質
※声の密度の高さ、空気量、質感、声質、声のトーンの高さに着目した際のグラデーションイメージです。
闇を引き絞る光の弓/儚い尾を引く光の矢:ジョンホ・ホンジュン・サン
ホンジュンとジョンホは、声質が凄く似ているなと感じる二人です。パートは違いますが、声自体が持つ密度の高さと温度感が似ていて、かなり親和性が高い気がします。
ジョンホとサンは、声質の明度と温度の高さが似ています。密度が少し違いますが、その違いがあるからこそ、声を重ねたときに重層感が出てすごく映える。
この三人の声は、ATEEZの音楽の中でも「物語を切り拓く声」「突破口となる光」「目指す星」といった扱われ方をしている場面が多い気がします。明度と温度が高くてかなり「光」よりの声です。音のスピードというか、発せられてから耳に届くまでの初速が速くて届きやすく、真っ直ぐに突き刺さるタイプの声。ライブで生歌を聴いた時もその速さと明度の高さと熱さにびっくりしました。
「Wonderland」(ホンジュン)
「HALAHALA」(ジョンホ)
「Answer」(サン)
それと同時に、この三人が声の密度をぐっと下げた声の使い方をすることで、強かった光が嘘のように儚くなる時もあります。
ホンジュン、ジョンホ、サンの声が流星の尾のような儚くか細い光の線のような声になる。それは迷いや苦しみ、悩みを表現するときに、いつも指針のようだった三人の声が儚く響くことで、胸を裂くような痛みが生まれるのかな、と思ったりしています。
「Not Too Late」(3人とも)
変幻自在の水・氷・蒸気:ユノとソンファ
声を重ねたときに響き方が似ていて、親和性が高い組み合わせ、ユノとソンファ。
それぞれよく響く得意音域や声質は違いますが、抜け感が似ていて互いに親和性が高い声質なので、繋いだり重ねたりしたときに違和感なく馴染みます。
また、かなりコーラスワークへの参加が多いのもこの二人。楽曲内での登場率(パート割合という意味ではなく)がダントツで高いのはユノとソンファなような気もします。集計取ってないのであくまで感覚ですが・・・。
ですが、この二人の真髄はATEEZの中でも屈指の変幻自在のボーカルであるというところだと思います。
個性的なボーカル陣をなめらかに水のようにつなぐ役割も数多く担っていますが、この2人は、温度によって液体・固体・気体と変化する水のように、さまざまな側面を持っているボーカルであり、ATEEZの楽曲の「多彩さ」の鍵なのだと思います。
ちなみにこの2人の役割の違いとして挙げられるのは、2人が立っている「地点(座標)」なのではないかと思っています。
ユノは、しっかりと中央拠点に根を張っている歌い手。前方に飛んでいく光の矢のような三人(ジョンホ・ホンジュン・サン)が帰ってくる場所をしっかりと守っている土台のようなイメージです。
対してソンファは、どこまでも後方に遠ざかっていく歌い手。音楽世界に奥行きが出るというか…。ソンファがいつも後ろのドアを開けてくれて、そこから追い風が吹いてくる、そういうイメージです。
そして面白いなあと思うのが、声を聞いているとユノとソンファで綱のようなものを引き合って、前方に飛んでいく三人とバランスを取っているような感覚に陥ることです。ユノとソンファの声はATEEZの命綱というか。幹とでも言えるでしょうか。
「Utopia」(ユノ・ソンファ両者パート)
磁場を狂わせる重力/地球に引き戻す引力:ミンギ
ミンギの声は一番異質です。
「ミンギパートが来ると何もわからなくなる」と周囲の友人がよく言っていますが、本当にその通りだと思います。一種、破滅的とも言える低くハスキーな声。ハスキーなのに優しい空気感はなく、音圧があって密度も高いです。かなり声の温度も高く、アンビバレンスで危険な魅力をいくつも携えている稀有な声だと思います。
ATEEZの楽曲では、ミンギは曲の磁場を狂わせんばかりの重力を持って登場することが多く、一瞬にして足元を掬われるような感覚に陥ったり、異界に落とされたような衝撃があったりします。
ミンギが登場することで、今までマップ上で見えていなかった巨大ダンジョンがいきなり解放されるようなマップの拡大や、同一地点にいるのに世界の裏側にいきなり連れて行かれたようなスケールのぶち抜きを目の前にするような感覚があります。
「Deja Vu」
「Precious」
その一方で、ミンギの声には飛んでいってしまいそうな音楽を強く引き戻す力も感じます。繋ぎ止める引力とでも言えるでしょうか。ミンギががっちりと引き戻してくれるパートもある気がします。
「Illusion」
「Still Here」
特異点となる変化の呼び声:ウヨンとヨサン
ウヨンとヨサンが担うのは、曲を変化させる「特異点」や「変化」の役割。物語を転換させる大きな鍵だと思っています。
ウヨンの声には独特な揺らぎがあり、バックの楽器の音や音域、重なる他の声質によって聞こえが異なっていきます。
もちろんウヨン自身が意識して変化をつけられる点もあるかとは思いますが、音楽自体によってその特性が左右されていることも多いです。音域や拍子、フレーズの音符の⻑さ、曲中でパートが回ってくるタイミングによって、 引き出される性質がかなり大きく異なっている気がします。そのためか「曲が動く」ポイントに置かれていることも多く、ストーリーを流動させる力を持っている声です。
「Mist」
ヨサンの声は、 帯が太くて響きの豊かさがありつつも、硬質でなめらかな質感があります。さらにはクリアな声質で、声が持つ温度は低め。
ヨサンの歌声は、楽器との馴染みが良いのにも関わらず、同時にクリアでもある不思議な声だと思います。楽器と共存し味方につけて歌うので、空間の掌握率がとても高い。聴き手の意識が自然とそのパートに集中させられます。
そしてその上でヨサンは曲の色をガラッと変えたり、音楽の中に流れる時間をピタッと一瞬止めてしまう力を持っている気がします。
「Answer」
夜間飛行という曲の特別さについて
ここまでATEEZのボーカル構成をちょっとかなり感性的に思うがままに分類して書いてみていましたが、このイメージが固まったのは「夜間飛行」という曲を聴き込んでからでした。
「夜間飛行」は、ATEEZの音楽の「物語るちから」が凄くて、本当にすごくて、涙をこぼして泣きながら何度も聞いた曲です。
どうしてこんなに心が震えて、どうしてこんなに真に迫って、どうしてこんなに普遍的な音楽に説得力があるんだろう、どうしてこんなに純度が高いんだろう、そう問いかける気持ちが止まらなくて、何度も聞きました。
夜間飛行は多くの人にとって特別な歌だと思います。
その特別さの中に自分が見つけた「どうして」は、やっぱりATEEZの声のちからでした。
夜間飛行は今までの緻密な物語構成も感じるパート割とは全然違っていて、パート割がかなり異質です。
物語をいつも開いてくれるホンジュンが、ジョンホが、その弓矢をどこに向けたらいいかわからず、鋭い声のまま彷徨っている。
透明で透き通った声でいつも道を照らしてくれるサンが、聞いたことのない明度の低さで歌っている。
いつも物語の色を遊ばせるウヨンが、真っ直ぐな声で悲鳴のような声をあげている。
柔らかく変幻自在なユノが、何に変化したらいいのか迷子になるみたいに温度のない無色な声で歌い、いつもは転換点であることが多いヨサンが、そんなユノに寄り添って歌っている。
何にだってなれるソンファが一番素に近いような声で歌っていて、いつもは一番異質な声を持つミンギが、滑走路のライトみたいに光を灯した声で導いている。
細かく細かく耳を澄ませると、ちょっとずつ異質なんです。
それでなおかつ、全員の声に生の感情が色濃く滲んでいる。
そうして段々と曲中の空が白んでいくと、8人のパートに感じていた異質さがちょっとずつちょっとずつ、解放されて、いつも聴いているATEEZの音楽に近づいていく。
闇を切り裂く光みたいに、包み込む水みたいに。ぎゅっと引き寄せる力みたいに、夜が明けて新しい日が来る変化の訪れみたいに。
8人の声が少しずつ夜明けを迎えて変わっていく。
そういう構成になっていて、そういう歌になっています。
音自体の力、歌詞の力、MVの力ももちろんなんだけど、声の力がどうしても胸を打って、それでこんなに涙が出るんでしょうか。
限界なので全然いま泣きながら書いています。オタクの涙腺は弱い。結論着地に失敗しました。後日なんとかまとめてみます。
EDENが書くATEEZのためだけの曲
ATEEZの父、メインプロデューサーであるEDEN先生が書くATEEZの曲は、つくづくグループで(というかあの8人で)やらないと意味がないようにできてるな…といつも思います。
KPOPアイドルの世界には実に色々な曲があって、一人で全パートをカバーして歌っても音楽として完成するタイプの音楽もあるけれど、ATEEZの曲は8人の声で歌わないと成り立たない曲が圧倒的に多いなぁと感じることがほとんどです。
各人パートが適材適所であるのは、もう上で散々語り尽くした通りなのだけど…。
それだけではなく、数人で声を重ねてコーラスしたり、カノンみたいに掛け合ったり、ほとんど息が重なるみたいにパートを継いでいったりすることで完全体の音楽として成り立つ曲が本当に多いです。形態としてはゴスペルとかクワイヤのためにかかれた曲にバイブスが近そうだなあと思っています。
一人で歌うと、本来曲が持つパワーや色、スケールが減っちゃうんだろうな、という感じ。
本当に8人のための曲だなぁと思うのです。
ソロアーティストとして自身も活躍し、ソロの歌手にも楽曲を書き下ろすこともあるEDEN先生。根っこから書き分けているんだなと思いますし、そこにEDEN先生の果てしない愛と本気を感じます。
EDEN先生が聴いている・見ている音楽の世界は、きっと気が遠くなるくらいに広くて、怖くなるくらいに自由で。それなのにずっと懐かしくて温かい大切なものを忘れずに見つめていて、そのうちの1つがATEEZの8人なんだと思う。
そしてそこは泣きたくなるくらい美しい。
そういうEDEN先生の視線とか世界が音楽に滲み出ている気がして、それもあってATEEZの音楽に心が震えるし、大切で大好きなんだと思います。
後記
わたしは、「苦しい、くるしい」「しんどい」「どうか誰か助けて」と思う時ほど無音で居られなくてずーっとずーっと爆音で音楽を聴くタイプです。そういうときは、大抵おまもりのプレイリストの中から一曲を手に取ってそれを繰り返し繰り返し聴きます。
そして、少し落ち着いてきた時、その曲によってようやく岸辺に引き上げられた時に、どうして君はそういう曲なの、どうしてそんなに私に響いてくれたの、どうしてそんな音が鳴るの、どうしてその声で歌うの、と問いかけ続ける癖があります。
だから、大切な曲にほど理由を探してしまう。
その曲が宝物であるほど問いかけを止めることができません。
自分が心動かされたものを無為に言語化することはときに危険な行為ですし、薄めたり歪めたりすることにもなりかねないと思っています。
それでも、大きく心が震えた時、大きく心の内側に音楽が鳴り響いて反響した時、「どうして君は」と訊ねずにはいられない。
そういう曲に出会えた時、何度も何度も問いかけて音楽と対話する時間が私にとっては本当に大切みたいで、それを書き残しておける場が自分のノートだけでなく、インターネットにブログという場所であることがありがたいと思っています。
すごく久しぶりになったブログ投稿が自分のためだけの文章になってしまったことに申し訳ないと思いながらも、友人と作った愛を語るこの場所に、拙いながらも残せることを感謝して。
Written by すや
Special Thanks 眠れない夜をいくつも一緒に過ごしてくれた夏至さん