集合知

3人の限界Kドルオタによるあれこれ

【でこ】2年半の歳月に大いなる祝福を 〜IZ*ONEの解散に寄せて〜

 

こんにちは、でこです。お久しぶりの記事投稿になりました。

今回のトピックは、2021年4月末をもって解散を迎えたIZ*ONE

 

公演からしばらく経過してしまいましたが、2021年3月14日に行なわれたIZ*ONEのオンラインコンサート・ONE, THE STORYを視聴しました。

 

 

2018年、K-Popにはまりだしてまだ間もない頃、La Vie en Roseと出会ったあの日から始まり。思いがけずIZ*ONEの結成から解散までを見届けることとなりました。

私はWIZ*ONEと名乗るには到底及ばないけれど、のちに伝説となるだろう彼女たちを見届けた生き証人のひとりとなれるなら、喜んで言葉を残そうと思います。12の輝きは確かに存在した。

 

ふだん女性グループに言及することはあまり無い私ですが、それでも確かに愛を傾け、想いを寄せ、その姿に憧れたIZ*ONE。コンサートを観てめぐらせた想いを綴った散文です。普段の記事よりも直情的な内容ですがよければお付き合いください。*1

 

IZ*ONE ONLINE CONCERT [ONE, THE STORY] セットリスト

セトリはこれまでにリリースした5枚*2のアルバムに沿って展開していく、映画のようなストーリー仕立てになっていました。

最終日となった2日目(日曜日)公演のセットリストは下記の通り。1日目と異なる日替わり曲は橙色字です。

▼IZ*ONE ONLINE CONCERT [ONE, THE STORY] Day 2 Setlist
  1. Intro~La Vie en Rose
  2. Mise-en-Scène
    〜MC〜
  3. 아름다운 색 (Colors)
  4. O' My!
    〜VCR:カラーペインティング〜
  5. Really Like You
  6. 해바라기 (Hey. Bae. Like it.)
    〜MC〜
  7. Highlight
  8. Violeta
  9. 언젠가 우리의 밤도 지나가겠죠 (SOMEDAY)(イェナ・チェウォン・ユリ)
  10. DAYDREAM(ウンビ・チェヨン・ミンジュ・ユジン)
  11. PINK BLUSHER(咲良・ヘウォン・仁美・奈子・ウォニョン)
    〜MC〜
  12. DREAMLIKE acoustic ver.
  13. Island acoustic ver.
  14. Pretty acoustic ver.
  15. O Sole Mio acoustic ver.
  16. FIESTA
  17. Rococo
  18. Merry-Go-Round
    〜MC〜
  19. 幻想童話 (Secret Story of the Swan)
  20. Panorama
  21. Sequence
    〜MC〜
  22. With*One
    〜VCR:宝物〜
  23. 平行宇宙 (Only One)
    〜エンディングメント〜
  24. Slow Journey

 

セットリストに沿い、彼女たちのデビュー~完走までの自分の思い出を重ねつつ、公演を振り返ります。

 

PROLOGUE: BECOME ONE

薔薇色の人生は、舞台装置であり、演出だったろうか?

デビュー曲のLa Vie en Roseから始まる公演。本コンサートが果たして当初から「最終公演」として準備されたものだったか否かは知るよしも無いが、結果として2年半を振り返るにはこの始まり方しかなかったんだろうと思うオープニングだった。

歌番組のデビューステージで初披露したかと思えば、あっという間に新人賞を掻っ攫い、数々の特別バージョンが披露されたLa Vie en Rose。どれも甲乙つけがたいながら、最終ステージは「凛とした」という表現が似合う、随一のものだった。華美に着飾るわけでもなく、12人の覇気がそのまま美しさとして画面越しにひしひしと伝わってきた。段々と明るくなるステージにただ立っているだけのイントロがここまで印象的になるなんて。

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https://natalie.mu/music/news/419965

当時の胸の高鳴りが呼び起こされる、でも2年半前から存在感を増した、そんな一曲目だった。デビュー曲はやはり特別な輝きを放つ。

ちなみに・・・PRODUCE 48は、当時放送されていたことは知っていたものの、オーディション番組恐怖症を患っていたためリアタイはできず。後々視聴を試みたものの、例の問題により各種配信サイトから削除されているため、現状YouTube上の評価パフォーマンス動画しか見られていない状況です。何より、デビューした12人を応援する上で、番組によって切り貼りされた演出を後追いすることがかえって邪念になりそうだったので解散を見届けるまで本編は見ないでおこう…と誓った次第でした。

 

La Vie en Roseの対比として、続いて披露されたのが最新アルバム収録のMise-en-Scène。咲良・ヘウォン・ミンジュによるキリングパート「너와 나만의 Mise-en-Scène」に、目を奪われずにはいられなかった。

フランス語であるミザンセーヌは、映画・演劇界において「演出」と訳される。広く捉えれば「画角内/舞台上すべての視覚的要素」────つまり、IZ*ONEというストーリーを構成する全てのもの、と捉えて差し支えないだろう。

ところで、彼女たち自身すら、Mise-en-Scèneを収録したアルバム:One-reeler Act Ⅳが最後の活動になるとは明確に知らされていなかったらしい、という話だ。「IZ*ONE」のミザンセーヌに、本人たちの意思は二の次だったのかと考えるとなんとも皮肉な話である。それでも、その事実を一層切なく感じさせる、神秘的なパフォーマンスだったことに間違いはない。2年半かけて作り上げられたIZ*ONE像をこうして消費「させていただいている」のが、なんだか申し訳なるくらいだった。

 

CHAPTER Ⅰ: COLORS ON

画一的だった12人が、色を得るまで

1枚目のアルバム:COLOR*IZ楽曲のパート。成長した彼女たちが改めてパフォーマンスする初々しい楽曲は、なんとも言い難い「エモさ」があった。

‘IZ*ONE’の名前で初公開するデビューミニアルバム<COLOR*IZ>は、英単語の‘色を着せる’という意味をもった‘Colorize’と同じ発音を活用したタイトルだ。アイズワンはデビューティーザー映像で公開したようにメンバーそれぞれの代表色を持っている。

この中でもデビューアルバムの<COLOR*IZ>は‘IZ*ONE’の情熱を最もよく表したカラーである’RED’を中心に表現、また‘RED’を最も美しく、かつ情熱的に表現できる‘ROSE’をコンセプトにしてアルバムを構成した。デビューへ向けてメンバー達の大事な夢、そして情熱をお見せする予定だ。

引用元:IZ*ONE韓国公式ホームページ ディスコグラフィ ※現在はリンク切れ

3曲目に披露された아름다운 색 (Colors)は、まさにアルバムコンセプトを代表するような「私たちの色」を歌った楽曲。

リリース当初の映像を見ると今との差が歴然としている。この頃のIZ*ONEはまだ「色を与えられる立場」とも言えるだろう。純白の衣装の見せる「処女性*3」がまぶしい。

IZ*ONE誕生のきっかけとなったPRODUCE 48。没個性な制服を着せ、「私を選んで!」と叫ばせた12人に、ひとりひとりの色をつける…大人ってなんて身勝手で残酷なんだろう…!

でも当日のパフォーマンスでは、その過程が彼女たちにとって実りあるものであったことがひしひしと感じられた。2018年当初とは比べものにならないくらい、12人全員のカラフルな世界が見え、ウォニョンに至っては本人そのものが「아름다운 색」だよなあとぼんやり思いながら聴いていた。

全員に「メンバーカラー」がある文化、日本のアイドルシーン由来かもしれないがオタクとしてはシンプルに嬉しかったりする。手持ちマイクのカラーリングがとにかく可愛かった。

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https://twitter.com/official_izone/status/1371129104871739393

 

CHAPTER Ⅱ: FROM THE HEART

その神秘性は、WIZ*ONEの目に触れ、明かされていくはずだった

2枚目:HEART*IZ楽曲のパート。

Violetaをはじめ、このアルバムにはどこか触れてはいけない神秘的な空気が漂う。リリース当時まだまだ内に秘められていた彼女たちの可能性は、ファンと直接交流するコンサートという場で徐々に開花されるように作られていた気がしてならない。

<HEART*IZ>は「La Vie en Rose」を通じて見せてくれたIZ*ONEの熱い情熱に加え愛と励ましを伝えたいという想いから誕生した。 

(中略)「フラワー」から始まり「空」につながる今回のアルバム<HEART*IZ>はトラックごとに有機的なつながりを持っていてトラックリストを順番に聴いていくとIZ*ONEがWIZ*ONEに感じた愛の感情と伝えたいメッセージ、そしてこれからのIZ*ONEの活動の方向性までわかることができる。

引用元:IZ*ONE韓国公式ホームページ ディスコグラフィ ※現在はリンク切れ

私が初めて、そして唯一の機会となってしまった、彼女たちを直接見ることができたのがこの時期。Tokyo Girls Collection 2019のステージでわずかに見ただけに留まったが、そのエネルギーの片鱗に触れるには十分すぎる時間だった。当日披露された曲だと하늘 위로 (Up)がお気に入り。

思えばデビュー当時の「与えられた色」から「グループの色」を身につけ、IZ*ONEというカラーが他の追随を許さなくなってきたのがこのHEART*IZ〜ファーストツアーの時期だったのだろう。12人が自身のメンバーカラーを背負って歌い上げたReally Like Youにその片鱗を垣間見た。当時の単独公演に足を運んだWIZ*ONEは、全員の開花をその目で見届けたに違いない。羨ましい限り。

特に6曲目の해바라기 (Hey. Bae. Like it)は、似たような曲が溢れるK-Popアイドル界においてIZ*ONEの色が他と一線を画すための武器として、仁美&奈子に存分にスポットライトが当たる曲としてもっと知られてほしい…と思ってやまない。「K-Popのスタイルじゃない」と揶揄された彼女たちの可愛らしい歌声だが、今となってはその声こそがIZ*ONEの楽曲たらしめる大切な要素だ。ちなみにHey. Bae. Like itがヘバラギにかかってること、たった今気づいた。遅い。

2019年当時はまさか有人公演が制限される世の中になるとは思いもしなかった。ファンとの交流を経てますます輝きを放つはずだった、IZ*ONEの時間を止めることができなかったのが惜しくてたまらない。

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https://twitter.com/official_izone/status/1168132786282094593

 

EPISODE CHAPTER: 12's Story

12人で100%が、100%が12人になるのは、喜ばしいようで少し寂しい

日替わり演出となったコーナー。2日目公演では、BLOOM*IZに収録されたユニット楽曲を披露してくれた。

普段のIZ*ONEとは毛色の異なるシックなダンスナンバーDAYDREAMや、ファン待望の披露となった致命的可愛さのPINK BLUSHERも、それはそれは良かったのだが、印象的だったのがイェナ・チェウォン・ユリによる언젠가 우리의 밤도 지나가겠죠 (SOMEDAY)

「チョユリズ」の由来が「全員ユリに見間違えられるから」という理由を知ったのはつい最近だった。それほどまでに、私はグループの中でこの3人が担う役割に異なる印象を抱いていた。

ユリの声質は決して派手ではないながら、トラックの力が強ければ強いほど相乗効果で深みの出る、月光のようなメインボーカル。反対にチェウォンは特徴的で華やかなボーカリストで、サビを務めると一気に全体の音が明るくなる。そしてイェナは抜群のリズム感でラップも担当するかたわら、バラードになると本人の実直な人柄がそのまま現れたかのように小細工のないまっすぐな歌声を披露してくれる。

私がただただダンスナンバーが好きという理由も多分にあるものの、正直IZ*ONEにバラードのイメージはあまり抱かない。しかしその先入観を覆すほど、3人それぞれの声が混ざり合った生歌唱は心に訴えかけるものがあった。三者三様の時計の文字盤を背負って歌う演出も相まって、なんだか3人ともがドラマの主人公に見えた。

スキルに磨きをかけた12人がこれから各自の道を立派に歩いていくんだろうと思うと、やっぱり寂しい気持ちが胸に残る。 

 

CHAPTER Ⅲ: BLOOMING DAY

心熱く燃え盛り 季節が息を吹き返す

こちらも日替わりでの歌唱コーナー。

ホームパーティーのような和やかな雰囲気で披露された4曲は、いずれもアコースティックが原曲と言われてもおかしくないくらいの仕上がりで、初日公演は別の曲だったと聞きその準備量に驚いた。中でもO Sole Mioはメンバーが「格好いい曲」と太鼓判を押すのも納得の名アレンジ!ラテン調のムーンバートン楽曲が、フラメンコギターの光る叙情的な一曲に化けたのがこの一日限りかと思うと実に残念。

 

そして、BLOOM*IZのタイトル曲、FIESTAの披露。

今まで心の中に秘めていた望みを叶うため成長の踊り場を乗り越えて万全の準備を整えたIZ*ONEは今回のアルバムで無限の可能性を持っている彼女たちの12色のすべての多彩さをお見せし、より一層眩しくて美しく満開した華やかな夢が実を結ぶ番である。

またタイトル曲「FIESTA」は曲名通りIZ*ONEが集まり絶頂と満開を咲かせた姿を「フェスティバル」というイメージを形にし、さらに果敢で華やかに表現した。「La Vie en Rose」の赤い情熱が愛の心を込めた「Violeta」に出会い、輝く未来を描いたとすれば、「FIESTA」は夢見てきた未来をついに現実にすること。

引用元:IZ*ONE韓国公式ホームページ ディスコグラフィ ※現在はリンク切れ

パフォーマンスに入る瞬間、それまで和やかだった12人の空気に一瞬キンッと緊張が走ったのが忘れられない。

今更掘り起こすまでもないが、アルバムリリースが延期されてからの暗く長い空白期は、皮肉にもFIESTAという楽曲を一層輝かせたと思う。先の見えない不安な時期を過ごしたのちに、既に獲り慣れているはずの音楽番組1位を受賞した瞬間、感極まり言葉が出なくなったウンビのことはよく覚えている。

↓両脇のアンニョンズが頼もしい。 

あの時ほどいちファンの無力さを痛感したことはない。後日発表された、咲良の手がけた日本語詞に胸を打たれずにはいられなかった。彼女たち自身が暗闇を打破し迎えた「祝祭」は、ひとつの伝説として後世に語り継がれていくのだろうか。

花たちが目覚め 花びら舞うとき
全てが始まる これこそがそうClimax
私自身が眩しく煌めく
誰も止められない
始めるわ

FIESTA 心熱く燃え盛り
季節が息を吹き返す
太陽は私を照らし
永遠(とわ)に沈まない
あなたも さあ ここへ It's my FIESTA
終わりのない It's my FIESTA

余談ですが、私はIZ*ONE楽曲の中でもFIESTAが一番好きです。昨年の個人的ベスト楽曲にも選出しました。

特に好きなのが、ウンビが歌う2番Bメロ「全てが始まる」の部分・・・ここの頭の「す」の音程、韓国語版の音源では1番のイェナと同じなんですが、その後ライブパフォーマンスではウンビがここの音を1音上げるアレンジをしていて。そして日本語バージョンを発売するタイミングではその音運びが正式採用され、「全てが」の部分が原曲よりもパワーアップしているんです…!!オンコン当日もばっちり決めてくれて涙涙。ウンビの覚悟が全て現れた最高のパートでした。

 

CHAPTER Ⅳ: ONEIRIC PAGE

もう会うことのない彼女たちは、まさに童話の中の主人公のようで

花三部作を経てIZ*ONEが迎えた新たなページ:Oneiric Diary (幻想日記)楽曲の章。

BLOOM*IZのリリーススケジュールが後ろ倒しにになったことに加え、2020年6月は既にコロナウイルスの影響真っ只中だったことを踏まえると、果たしてこのEPの編成は本来IZ*ONEが予定していた「正史」だったのだろうか?と今でも考える。

魔法の様な力を通じて、胸の奥に持っていた夢が現実になり、童話の中の主人公になったIZ*ONEを表現した。そして、共に夢見れば誰でも童話の中の主人公になれるという物語を歌い、リスナーに応援のメッセージを伝えようとしている。IZ*ONEのみが表現できる圧倒的なパフォーマンスと様々な魅力が映画の様に広がる曲である。 

引用元:IZ*ONE韓国公式ホームページ ディスコグラフィ ※現在はリンク切れ

これまでで最もインパクトのある楽曲となった幻想童話 (Secret Story of the Swan)は、それまでのIZ*ONEのイメージからは大きく路線が違う。リリース当時、私は華やかなIZ*ONEと力強いブラスのサウンドが結び付かずやや懐疑的だった(FIESTAが好きすぎるあまり、というのもある)。一方で収録曲のMerry-Go-Roundは、好みドンピシャのタイトでファンキーなポップスで歓喜した。しかし確かにこの曲もこれまでのテイストとは異なる。

しかし、こうして時系列を追うセットリストで楽曲を改めて見てみると、毛色の違うテイストもそれぞれが全てPanoramaという一本の映画のための布石だったかと大いに合点が行く。一曲一曲がまさに「童話の世界」で、その中には祝祭を経て個を確立した力強い12人の生き様が収まっている…というのは言い過ぎだろうか。コロナ禍で会えなくなってしまった画面の中の12人は、余計に遠い世界の住人のように感じられた。

個人的に、幻想童話の主人公はチェヨンとミンジュだと思っている。真っ直ぐな眼差しで舞うチェヨンの力強さが無ければこの曲はそもそも成立しなかっただろうし、華奢で可憐なイメージのミンジュのポテンシャルを一段階引き上げたのはこの曲の強さ故な気がしてならない。

 

CHAPTER Ⅴ: ONE. THE STORY

「終わりがあるから輝く」なんて言わせない

最終アルバム:One-reeler Act Ⅳ楽曲を聴くのは、公演中最も楽しみであり、最も恐れていた瞬間だった。これを聴いたら終わってしまうことを知っているから。

洗練されたベースラインが印象的なSequence。もはや語るのも野暮なくらい、ユジンの存在感に目を奪われ続けた。ウォニョンがデビュー当初から変わらぬ華々しさでグループの顔を務め上げたとすれば、とある瞬間から力の抜き方を身につけ覚醒したユジンはグループの最後の飛躍を担ったと思う。2人の更なる伸び代をこのグループで見られない現実が辛い。

 

私が公演の演出家だったら、Panoramaを本編最後に持ってきて一切の余韻を残すことなく幕切れを輝かしく飾る選択をしただろう。 しかし蓋を開けてみれば、La Vie en Roseに始まり順を追って披露してきた流れそのままのセットリストだった。

冒頭でも触れたが、Panoramaでの活動がラストとなることを当時メンバーたちははっきりとは知らされていなかったと聞く。直後に年末歌謡祭こそ控えてはいたものの、Mnetお膝元のM COUNTDOWNですら、マッパン(最終放送)で特別なラストステージ*4が設けられることはなかった。過去楽曲の振り付けを取り入れ、「永遠に覚えていて 約束」と歌うのにも関わらず見通しは不透明なまま…ファンでこそ心の整理がつかないまま迎えた活動だったのに、当の本人たちはどんな気持ちだったのだろうか。でも、だからこそ、この曲は究極の輝きを放つ。

「最後」を意識してしまうと、曲にもパフォーマンスにも少なからず湿っぽさが漂う。しかし、Panoramaは12人が辿り着いた境地、ただそれだけだ。過去楽曲の流れを汲み披露されたパフォーマンスは、この公演が実質ラストとなることを微塵も感じさせず、高貴で可憐でただひたすらにIZ*ONEであり続けた、そんな不可侵領域だったように感じられた。

Panoramaの世界に「最後」という概念は似合わない。ただ一つ悔いることを許されるならば、何万人ものファンの前で歓声を浴びながら披露される「三次元のPanorama」をこの目で見届けたかった。

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https://natalie.mu/music/news/419965

 

本編最後の曲・With*Oneの段階では、コンサートが始まってからたった1時間半しか経過していなかった。2年半を濃縮した1時間半はあっという間で、メンバーも視聴者も過ぎ去る時間を惜しむ隙がなかったように思える。With*Oneを歌いながら感極まる12人の素顔を見て初めて、この公演が正真正銘最後の単独公演だと気付かされた。

全員が目を潤ませいっぱいいっぱいになる中で、ただひとりずっと笑顔を保ち自分のパートを完遂したウォニョン。目まぐるしく躍進を遂げたIZ*ONEが徹頭徹尾IZ*ONEであり続けたのは、他ならぬウォニョンの芯の強さあってこそだったのだと、この瞬間改めて確信を得た。

 

CHAPTER Ⅵ: US

IZ*ONEは「友達」

この日初めて披露された平行宇宙 (Only One)はウンビ作詞作曲のミドルバラード。WIZ*ONEとIZ*ONEは平行世界で互いに見つめあっている…というメッセージが込められているが、ついぞ最後まで世界が交わることは無かったのかと考えると悔しさが募る。その言葉を直接受け取ることができたらどんなに良かっただろうか。

 

そして迎えたエンディングメント。実に1時間以上の時間をかけながら、一人一人が懸命にメッセージを届けてくれた。音楽ナタリーのレポート記事より以下に引用する。

ユジン

「こうして最後の挨拶をオンラインでやることになるとは思いませんでしたが、すべてのスタッフさんに感謝しています」「イライラしたときも、いいことがあったときも、寮で集まってメンバーと話す時間が大好きでした。特別なことをしなくても会話するだけで幸せでした。20歳になったらメンバーとやりたいことがたくさんあります。WIZ*ONE、愛してます。これからもっとカッコいい歌手として成長しますので、見守っていてください」

イェナ

「いつか最後が来るとは思っていたけど、いざ来ると悲しすぎて……。WIZ*ONEに会いたいですし、歓声も聞きたいし、これから『WIZ*ONE』って言えないのは心が痛い。それでも、今日が終わっても私たちがIZ*ONEだということは変わらないのと同じく、WIZ*ONEも変わらずWIZ*ONEです」

チェウォン

「最後のコンサートだなんて最近まで実感が湧かなかったですが、団体練習をするときにこれがもう最後だと思ったら、そのときに実感しました。こんなに大きな別れは初めてです。準備しながら心がもどかしくて変な気持ちでした」「2年半、実は疲れてしまうときもありましたが、そのたびにIZ*ONEとWIZ*ONEがいたからまた立ち上がることができました。絶対に忘れられない思い出を本当にありがとうございました。とても幸せでした」

ユリ

「数百回、数千回踊ったダンスですが、今日は特に緊張しました。今の私が皆さんの生活に少しでも笑顔を差し上げられていたら、それで十分幸せです。皆さんといるこの瞬間、絶対忘れずに記憶します。だから皆さんも私たちを忘れないでください」

奈子

「私は韓国に来る前に『韓国のスタイルじゃないと思う』って言われて、最初は不安で怖かったです。でも、デビューしてからWIZ*ONEが私に力をくれました」「これまでのコンサートでは最後に『また会いましょうね』って言ってたのに、今日はそう言えないのがとても悲しいです。2年半で学んだたくさんのことを、これからの人生で生かしていけるようにがんばります。私にとってIZ*ONEは永遠に大切な思い出で、WIZ*ONEの皆さんは永遠の宝物です」

咲良

「IZ*ONEとしての日々は今日で終わりになります。私はとても幸せでした。終わりが来るんだと心のどこかではわかっていても、それでも必死で駆け抜けてきた、最高の2年半でした」「IZ*ONEがいなくなっても今までの2年半はなくなるわけじゃないから、今は悲しい気持ちだろうけど、どうか振り返ったときにWIZ*ONEになってよかったなと思ってくれたらうれしいです。私がIZ*ONEでいたこと、WIZ*ONEがWIZ*ONEでいたこと、お互いに忘れないでいましょう。約束です」

ウォニョン

「私はハッピーエンドが好きです。WIZ*ONEも笑っていてほしいです。IZ*ONEとはさよならしますが、すべて終わりではないから。初めて会ったのは(自分が)14歳のときでしたが、こうやってかわいいメンバーが見守ってくれて応援してくれるのが幸せでした。この先どこに行ってもこういうお姉さんたちには会えないと思います。さよならしてもお互いのことを思う関係でありたいです」

ウンビ

「私はWIZ*ONEに会えて大きな愛をもらって、特別な人になれました。幸せにしてくれてありがとうございます。メンバーたち、私は足りないところが多かったですが、いつもよくついてきてくれたからこそ、私はIZ*ONEのリーダーになれたと思います。心から感謝します」

仁美

「時間が過ぎたら幸せな記憶も色褪せてしまうけど、IZ*ONEとして送った歳月は、時間が過ぎても色褪せない、鮮明な時間として残ると思います」「(メンバーへ)韓国に来たときに韓国語がわからず大変でしたが、助けてくれてありがとう。おかげでできることが増えました。もう韓国で電車にも1人で乗れるし、出前も頼める。よく『お腹痛い』って言って心配かけてすみません」

ミンジュ

「私はいつも1人が馴染んでいて、思いやってもらうのが苦手でしたが、今は1人になった自分が想像できないくらい皆さんが自分の日常で大きなところを占めています。WIZ*ONEとIZ*ONEは私ががんばれる理由、幸せである理由、自分のすべての理由です。皆さんに会えたのは自分の人生で一番大きな幸運で、皆さんと一緒にいたすべての瞬間がいつまでも自分を守ってくれると思います」

チェヨン

「自分より自分のことをもっと知ってくれるWIZ*ONEのおかげで自分という人間をもっと愛せましたし、真剣に悩むときもメンバーはよく聞いてくれたり、へウォンみたいに気遣ってくれたり、お陰で笑えることが多かったです。本当にありがとうございます。いつもWIZ*ONEの心にはIZ*ONEがいてほしいですし、私たちにはいつもWIZ*ONEがいるということを知っていてほしいです。私という人間を愛してくださってありがとうございました」

ヘウォン

「振り返れば2年半、自分のせいでWIZ*ONEが幸せじゃない日々もあった気がして申し訳ないとずっと思っていたんですけど、WIZ*ONEがいつも『愛してる』『幸せだ』と言ってくれて、誰かの幸せになれたようで、申し訳なさがちょっと減った気がします」「私の友達になってくれてありがとうございます。WIZ*ONEと話していると本当の気持ちが伝わってきて、すごく楽しくて、幸せでした」

引用元:IZ*ONE、12人の歴史追った最後のコンサート「2年半、とても幸せでした」(ライブレポート / 写真9枚) - 音楽ナタリー

途中、過呼吸を起こしかけたチェウォンのフォローにすかさず回る咲良や、冗談を交えて空気を和ませる仁美など、随所に2年半の絆と成長をを感じられる瞬間が見受けられたが、やはり涙なしには見られない1時間だった。

その締めくくりを担ったヘウォンのコメントが忘れられない。緊張の走る中何を語るのかと固唾を呑んで見守っていたところ、彼女は涙を流しながら「今日もキムチ餃子買ってくれてありがとうございます」とマネージャーに感謝の意を示し、日本語で「日本の皆さんありがとうございます。韓国語で話そうとしてくれてありがとうございます。私の友達になってくれてありがとうございます」と日本のファンに伝えた。

スキル面では他のメンバーに劣ると自分でも語っていたように、彼女は決して歌割りや分量の多いメンバーでは無かった。それでも彼女がメンバーに愛され、ファンに愛された理由がこのメントに凝縮されていると感じた。「アイドルは人柄」だと、ヘウォンが身を持って証明してくれたように思える。

作り上げられた偶像でもなんでもなく、12人はファンと「友達」────対等な目線に立てるWIZ*ONEは何て幸せなんだろう。

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https://natalie.mu/music/news/419965

 

後書き:この物語にエピローグは無い 

こんなにも美しくドラマチックな12人の一部始終を見せられると、誰もが一編の物語を描こうとする。オーディション番組も、プロモーション担当も、そしてファンもだ。かくいう私も、事実だけを並べたかったはずがその間にない文脈を探してしまった。一歩間違えれば「偶像としての消費」に他ならないこの行為は、常に危険と隣り合わせだと忘れてはならない。

その一方で、彼女たちが最後に選んだ楽曲Slow Journeyは、公演本編の流れからすれば拍子抜けと言っていいくらいゆったりとしたアコースティックナンバーで。これこそが、数多の大人たちが仕立て上げた「IZ*ONE」という恣意的で壮大な物語を、最後に12人が否定した瞬間と言っていいかもしれない。誠実で、謙虚で、笑顔の溢れる素直な女の子たち、それがIZ*ONEにほかならないと。

「キムチ餃子おいしかったね」────涙ながらに笑い合う12人に、他人が立ち入る隙は、もう無い。

 

奇しくも本日2021年5月4日は、PRODUCE 101の先輩グループI.O.Iが5周年を記念して一日限りの配信コンサートのために再集結します。

そんな未来をIZ*ONEの12人が迎えられるその日まで、この2年半のことを忘れることなく記憶に留めていたいと思い、拙い文ながら備忘録を書き留めました。どうか12人がこれ以上不当な扱いに翻弄されることなく、たくさんの愛と共に生きていけますように。

 

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https://twitter.com/official_izone/status/1038383086323388417

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https://twitter.com/official_izone/status/1388146133122310150

 

【終】

*1:宗教上の理由により日本盤活動にはほぼ触れていませんが予めご了承ください。

*2:日本盤除く

*3:48シリーズに代表される、日本のアイドルシーンへの皮肉も込めて敢えてこのような表現をしています。ご気分を害されたファンの方がいらっしゃいましたら申し訳ありません。

*4:Wanna One解散時は「ラストステージ」と銘打ったパフォーマンスが設けられたり、歌唱中メンバーの過去の写真が投影されたりと、歌番組での厚遇が少なからず見受けられました。